lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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宝塚戦略―小林一三の生活文化論(朗らかに,清く正しく美しく。)

2月2日の日記で,阪急電車のマルーン色について検索している途中で見つけた本です。

宝塚戦略―小林一三の生活文化論 (講談社現代新書)

宝塚戦略―小林一三の生活文化論 (講談社現代新書)

「清く正しく美しく」は宝塚歌劇のモットーとして有名ですが,元々(創始者小林一三の言葉)はその前に「朗らかに」という言葉がついていたとこの本で知りました。
気分転換にと軽い気持ちで読み始めたのですが,中身が濃く思わずメモを取りながら熱心に読んでしまいました。

一三が手がけた事業は,電鉄,電力経営と興業に要約され,それらはいずれも「客商売」で共通しており,大衆相手の日銭産業である。しかも一三は事業経営の基本に,自他共に利益することによる共存共栄,つまり「需要者の利益を主として尊重し,計画する方が却って供給する人に利益が多いのが原則でならねばならぬ」と考えていた。

ああっ,どこかで似たような感じの記事を読んだのだけど,どこだっけ。
思い出した。「Web2.0」と手品師のビジネスモデルH-Yamaguchi.net

こういう「あまりもうけなくていい」(誤解を招きやすいねこの書き方は)経営姿勢というのは、これからけっこう重要になってくるのではないだろうか。権利にこだわりすぎたり、有料化ばかりを志向したりとかしてると、かえって市場が育たなくなる。逆に、もうけなくていいって決めちゃったら、もうけようという会社はかなりつらい立場になる。古風にいうと、肉を切らせて骨を断つ、というたぐいなんだろうか。

再び本題に戻ります。

共栄の理想は,一三がかつて掲げた「利益の三分主義」に集約されている。つまり,会社の経営は,資本家によってのみ専行すべきものでなく,株主には一定の利益配当を与えて,それ以上の利益は株主と,社員と,この会社に関係深い地方公益(すなわち沿線の公衆・乗客)への分配,という三分主義に立脚すべきだというのである。

今は東京拘置所の誰かさんに聞かせたい言葉です。

働きたい人々には仕事が与へられ,その受ける報酬は人間の生活を保障するに十分なものであれば,働く大衆は政治の有難さを謳歌し,その働きは社会のためだといふ自覚にほゝえんで誰もが明朗になる。

小林一三の著書『次に来るもの』からの引用だそうです。ユートピア,理想論と言われるかもしれませんが,時の首相が(改革に伴う社会格差)「悪いことではない」と(やや口が滑った感がありますが)公言してしまう今の時代にこそ必要な言葉ではないかと思いました。