検証 東日本大震災の流言・デマ
- 作者: 荻上チキ
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/05/17
- メディア: 新書
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2011年5月20日初版1刷発行,ということでスピード出版ですね。
p.204 流言やデマは,人間同士がコミュニケーションを行う以上,必ず発生するものです。その拡散を最小化し,影響を最小化し,不幸な事例を生まないようにすること。そのために有効なヒント,あるいは流言への抵抗力となるワクチンの役割を,本書は果たせたでしょうか。その判断は,読者の皆様に委ねさせていただきますが,少しでもこの社会の「流言耐性」を底上げする役に立てることを願っています。
上記のねらいを果たすべく,流言・デマの記録&検証をしているだけではなく,震災時にみられた現象についていくつか名付けをしているのが興味深かったです。
p.92 東日本大震災の際には、「注意喚起のための流言・デマ」もさることながら、「救援を促すための流言・デマ」が、非常に多く出回りました。そうした流言やデマの拡散に加担してしまったのが、多数の「情報ボランティア志願者」の存在。地震発生直後から、テンションがトップギアに入ったままの状態になり、「自分にもできる、何か役に立つことをしなくては!」とネットの前にかじりついて、懸命に情報発信をしようとする多数の人が現れたのです。
p.93 また、もう一つ気になった現象があります。それは、ボランティアに参加した人などが、自分が見聞きした不確かな情報を元に、声高に「これこそが真実だ」「メディアは真実を報じない」「政府は何をやっているんだ」といった批判の声をあげるような場面です。
ボランティアに行った人が、現地で懸命に活動すること自体は素晴らしいことです。しかし、ボランティアもまた、その善意ではなく効果によって評価されるべきです。そして彼らの発言もまた、善意やボランティアをしたという事実とは別に、冷静に吟味される必要があります。
このような現象について,著者は『災害ユートピア』をもじって「災害カーニバル」とでも呼べるような状況があったのではないか,と書いています。
lionusも禿げしく同意です。
そして,「災害カーニバル」のネガティブな影響力について言及されていた箇所にも,そうそう以前から気になっていたのよね〜と同意でした。