lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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CSRのマネジメント―イシューマイオピアに陥る企業―

CSRのマネジメント―イシューマイオピアに陥る企業

CSRのマネジメント―イシューマイオピアに陥る企業

本書のサブタイトルにある「イシューマイオピア」とは,企業の社会的責任≒ソーシャルイシューのうち,特定のもののみを認識し,他には目がいかなくなってしまっている現象を指すということです。
企業不祥事を考える際に,なかなか面白い考えが提示されていると拝見しました。

p.128 イシューにマイオピアに陥っている企業は,事件の種類ごと,個別具体的に不祥事をとらえる。

p.129 不祥事を引き起こした企業は,謝罪会見で「二度とこのようなことは繰り返しません」と発言することが多い。イシューマイオピアに陥っている企業にとって,この発言は,「二度と同様の事件は繰り返しません」という内容を意味する。他方,社会の側は,この発言を「二度と会社に迷惑をかける全ての事件は繰り返しません」という内容を意味するものとして認識しているのである。

→会社と社会の間における認識ギャップの存在
もうひとつ,会社内の認識ギャップにも要注意とも述べられています。

p.130 原因・責任分析活動により,特定の部署のみにソーシャルイシューへの対応責任が課されることになる。したがって,不祥事が引き起こされると,組織の中に,いわば「当事者―他人事意識」が醸成される。例えば,雪印の1回目の事件*1の場合,その原因は主に製造部門に帰属された。そのため,製造部門では「これは製造部門のイシューである」という当事者意識をもつ。他方,他の部門では,「それは自部門のイシューではない」,さらには飛躍して「自部門にはイシューはない」という他人事意識をもつ。このような組織体としての特性は,企業がイシューマイオピアに陥る要因となる。

*1:本書では雪印乳業集団食中毒事件および雪印食品牛肉偽装事件の事例分析を行っている。