lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

嘘と絶望の生命科学

嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)

嘘と絶望の生命科学 (文春新書 986)

前記事の『背信の科学者たち』とセットで読むと,STAP細胞事件の背景というか,日本のバイオ研究界隈のトホホ事情がよく理解できそうです。
例えば何でバイオ出身は”食い詰める”と言われているのか,よく理解できていなかったのですが,他の理系と違ってバイオ系は数学や物理,化学が不得意な人が多く,だから,もし途中で”脱出”しようとしても民間企業の理系的な就職先がない・・・ということなんだな,と納得したり。
また,バイオ研究のみならず(全般的な)大学院重点化後のトホホ状態・・・ポストは増えないのに大学院生だけ増やしてどうするの・・・出口を全く考慮せず入口だけ広げても駄目だったでしょ問題についての言及もあります。
著者の榎木先生は東大理学部でバイオ研究→中途でバイオ研究の道を見限って神大医学部に学士入学された後,病理医になられた方です。
このように賢く”損切り”をされた方だからこそ,ここまでのぶっちゃけ本を書けるのだと思います。
まあ医師免許を取った上でバイオをするのが一番いいんでしょうね〜*1

*1:iPS細胞の山中先生ももともとは医師だし,だからこそNAISTで共同研究者の高橋先生に「成果が出なくても,一生面倒見るから(=研究が駄目だったら臨床医に戻ってクリニックを開業し,事務かなんかで雇うから)」とまで言って腹をくくって頑張れたのだと思います。