lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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自白―真実への尋問テクニック/取調べの心理学―事実聴取のための捜査面接法/取調べの可視化へ-新たな刑事司法の展開-(尋問テクニック、面接技法、取調べの可視化。)

ちょっと都合があって読んでみました。

自白―真実への尋問テクニック

自白―真実への尋問テクニック

  • 作者: フレッド・E.インボー,ジョセフ・P.バックリー,ジョン・E.リード,小中信幸,渡部保夫
  • 出版社/メーカー: ぎょうせい
  • 発売日: 1990/02
  • メディア: 単行本
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ざっくりいえば、”おどしたりすかしたり”して、「自白」を引き出すテクニックが満載です。えええ〜こんなことしていいの〜というのが素朴な感想でした。

p.352
心理学的にいうと、尋問とはうそを解体することである、と考えられる。したがって、自白の心理を理解するためには、うその心理について基本的な理解を得ておくことが必要である。被疑者の尋問という見地からいうならば、うそとは”自己の利益のために、真実を曲げまたは否定するために選択された行動”である、と定義することができる。この定義の中で重要な部分は、”自己の利益のために”という点であり、これによって、すべての被疑者のうそには一つの共通する動機がある、とみることができる。

この1行目の定義など、なかなか面白い言い方をされている、とは思うのですが、本書を読む際に注意しなければいけないことは、本書で「心理学的」と書かれていても、それは必ずしも「心理学的」ではないということです。
そこのところ、訳者の先生により

p.351
訳者注―ここにいう心理学的なモデルとは、尋問と自白との心理学的な関係を一目瞭然に理解できるように説明した実践理論という意味である。

と注が入っているところは重要です。
本書では続いて、被疑者がうそをつく行動はオペラント条件づけによるものだ、と主張されているのですが、それはオペラント条件づけではなくむしろ社会的学習じゃないのん?というツッコミをしてみたり。
このように、色々と注意が必要なところはありますが、職務に熱心な取調べ実務者による”経験知”の集大成として興味深い本です。

取調べの心理学―事実聴取のための捜査面接法 (法と心理学会叢書)

取調べの心理学―事実聴取のための捜査面接法 (法と心理学会叢書)

1冊目の本とは対極におくことのできる内容です。よりよく、効果的な聴き取り技法について心理学者により理論と研究の面から概説されています。
取調べの可視化へ -新たな刑事司法の展開-

取調べの可視化へ -新たな刑事司法の展開-

・・・何かあったときのために自分もICレコーダーを常備しておかねばと思わされたり。