lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

死んではいけない―経営者の自殺防止最前線(会社倒産から生まれ変わりへの記。)

死んではいけない―経営者の自殺防止最前線

死んではいけない―経営者の自殺防止最前線

経営する会社が倒産した経営者が,その後経営者の自殺防止のNPO法人を立ち上げ支援に至るまでの体験を記した本です。
バブル崩壊から長い不況のうちに地方(著者の場合は秋田)の経営環境が悪化してにっちもさっちも行かなくなった経過が分かりやすく書かれているところは参考になりました。
著者と相談者とのやりとりの一部です。

p.66
一時間半のくどき話を聴かされた。ぶつける相手のいない悲愴感から,本音が噴出した。話の終わり際に,射すくめるような底光りの目で,「先生の相談は何の役に立つのですか」と言った。「先生と何度も会っているが,困ったときに金をくれるわけでもなければ,事業の応援をしてくれるわけでもない。相談が何の役に立つのですか」と言うのだ。ヤクザの口調が出ていた。
少しの間が必要であった。
「俺は先生ではないけど,あなたは何の役に立たない男に,一時間半も自分の気持ちを語ったんだね」
男は,思考が停止した顔になった。ウーンと唸って,黙り込んでしまった。
「また,来てもいいですか」と言って,帰って行った。

(太字はlionusによる)
「顔は四角張って,眉は太く,目は一重の三白眼。黒々とした髪には櫛目が入り後ろに撫でつけられている。顔に威圧感がある。185センチくらいの長躯でがっしりした体型である。」「ダブルの背広を着込んでいる。一見ヤクザ風。」という相談者と向かい合ってのこのやりとり。
とてもではないが,ちょっとした「ボランティア精神」ではできない活動です。
NPO法人「蜘蛛の糸」ホームページ