lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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社会学わが生涯 (シリーズ「自伝」my life my world)(そういえばA先生は。)

社会学わが生涯 (シリーズ「自伝」my life my world)

社会学わが生涯 (シリーズ「自伝」my life my world)

断続的に読んでいるミネルヴァ書房の シリーズ「自伝」my life my world の中の1冊です。
今まで読んだものに比べ、少々分厚い(ページ数がやや多い)ので読むのにそれだけ時間がかかりました。
どこで何をしたか、その時何を思ったか、という自伝的内容と、自らの研究内容についての記述がバランスがとれているように思いました。
社会学そのものにあまり興味が持てなくても、在外研究のエピソードなど興味を持って読めましたし、社会学の研究書ではないながら、社会学入門的な読み方もできそうな内容もありました。
lionusは社会学シロートなので、全く未知の土地を紹介されるような気持ちで読んでいましたが、著者の先生がプロジェクト・リーダーをつとめられた1975年の第3回SSM調査に関わった当時の東大大学院生の中に、lionusが院生の頃TAをつとめさせていただいた社会学部のA先生のお名前が出てきたので、おっ!と引き込まれてしまいました。
「コンピュータ基礎」なる授業でしたが、日本語入力の練習文に夏目漱石の『三四郎』の一節を使われていたことを思い出しました。
ところで、以下は本筋からすると些末ですが、疑問に思った箇所です。
ドイツに在外研究(留学)されたおり、招かれてフランスの経営者に日本の企業について講演をされたときのエピソードです。

1981年のことだから、フランスの経営者の関心は日本の終身雇用に集中し、講演が終わってからもあとからあとから質問が出て、2時間くらい私は質問から解放してもらえなかった。彼らは、「終身雇用が珍しいのではありません。フランスにも終身雇用はたくさんあり、とくに公企業はたいてい終身雇用です。フランスでの問題は、終身雇用だからクビを切られる心配がなく、みんなが働かないということなのです。日本では終身雇用でみんなよく働くという話だから、その秘密がどこにあるのか聞きたいのです」と口々に言った。私は、日本の終身雇用のよい点は、みんなが長期間一緒に働いていて同僚とよく知りあっているから、相互に相手を見ていてサボることができないし、サボる気にもならないことである、だからお互いに力を出し合って一生懸命働くのだと述べたが、フランス人たちは納得せず、何度も同趣旨の質問を繰返した。

私も、当時のフランス人たちと同じく、この説明では納得できかねます。
また、富永先生のおっしゃる通り相互監視が機能しているとしても、「よく働く」の内容は吟味が必要かもしれません。能率悪く単に長く働いているのかも(自分だけ先に退社できかねる)しれません。
どーも自分を含め日本人は「欧米」と言うときには実は「米」のみを念頭に置いているような気がします。
ヨーロッパのことはよく分かっていないのですよね。だから余計にこの説明では納得できないのかもしれません。