lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

犬と話をつけるには(犬の話ではあるけれども。)

犬と話をつけるには (文春新書)

犬と話をつけるには (文春新書)

著者の多和田悟氏を知ったのは,NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」第48回「イヌは人生のパートナー」ででした。
この回の放送を見たとき,「(盲導犬の訓練は)学習理論そのままじゃん!」「(犬相手の話だけど)人間にもそのまま応用可能だよ!」と,ちょっと感動し,録画していなかったことを大きく後悔しました。
その後再放送された時に録画して,個人的に授業のネタに利用させていただいています。
学習理論うんぬんということについては,この番組のホストである茂木先生の発言でさっくりと表現されているので引用します。

褒められることで「学習」は完結する
 成功体験を経て、初めて学習は完結する。それは脳科学的にみて事実である。今回お話を伺った盲導犬訓練士の多和田悟さんが言われていたように、盲導犬の訓練の過程で「No」は最後に「Yes」と言うための1つの段階として使うというのは、脳の強化学習のメカニズムから言うと納得のいくことだ。
 最後に褒められてドーパミンが出て、それで強化学習が完結する。このメカニズムというのは、それこそラットあたりから人間まで基本は変わらない。犬もそこは全く同じだなと思った。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20070413/122730/

保健所仕事で時々出会う保護者の方の「主訴」として「外に連れていくと,ダァーと走り回って呼び戻しがきかないので困る」というものがあります。それについては,背景(理由)は様々なので,いちがいには「どうすればよいか」ということは言えないのですが,以下のくだりを読んだ時,この「主訴」を思い出しました。

うちの犬はお手もできないし,お座りもしない,呼んでも来ないし,言うことも全然聞かない―こんなときは,もっと原点に戻って犬との関係をやり直す必要があります。その犬はあなたに関心を持っていないか,性格に問題があるかのどちらかだからです。
一度,コーヒーカップを片手にフリーランにでも連れて行ってみてください。フリーランでなくても,閉鎖されていて犬が放せる場所ならどこでも結構です。そして犬を放し,コーヒーでものんびり飲みながら犬が戻ってくるのを待ってください。大事なことは「犬が自分から戻ってくること」。1時間でも2時間でも黙って待ちます。戻ってきたら,少し大げさなくらい褒めてやります。そしてまた,
「行っといで」
と放します。今度はもっと早く帰ってきます。

上記の「犬」を「子ども」に置き換えて考えてみると面白いと思います。
やんちゃな子どもに対しては,名前を呼んで叱ることがつい多くなってしまいます。
それを繰り返すと,名前を呼ばれることがネガティブな印象になってしまいます。
子どもは犬と違い人間ですから,成熟するにつれ,名前を呼ばれたら反応を返さないと「いけない」と,一応「考えて」学ぶことはできますが,でも名前を呼ばれたら反射的に「ウッ」とくるのが先に立つだろうなあと思うのです。
だから呼び戻しがきかない(ききづらい)のもさもありなんでしょう。
一度,上記のことを試してみたらどうなるんでしょうか。
母親になったことがないlionusの机上の妄想かもしれませんが。
なお,本書には続いてこう書かれています。

何時間待ってもさっぱり帰って来ないときはどうすべきか。あなたとその犬の間には何の歴史も築かれていなかったのだ,と悟って諦めた方がいいでしょう。

・・・ここはまた犬と人間の子どもとは違ってくるでしょうが・・・ただ,さっぱり帰ってこないということ自体が,(普通ではない)何らかの問題が存在することを明確に示してくれるという点で,無駄な実験ではないと思います。
・・・
この記事を書くために著者のお名前でぐぐったら,ご本人のウェブページブログを発見しました。
本書にも,ブログの記事が一部転載されています。
犬好きにはたまらない内容です。オススメ。