lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

血液型性格研究入門―血液型と性格は関係ないと言えるか/血液型でわかる相性―伸ばす相手、こわす相手 (プレイブックス)/決定版 血液型で人間を知る本―幸せになる相性の科学 (青春文庫)/新・血液型人間学―あなたの人生を決定づける本 (角川文庫 びっくり文庫)(名人芸と考えた方がよいのでは。)

血液型と性格とは関連があるという考えは一般に広く流布していますが,大抵の心理学徒はそれを非科学的な「俗説」として,関連性は否定されていると主張する傾向があります。
一応,lionusもその一員です。*1
ただ,大昔にちょっと調べてみたところ,心理学者の中にも血液型と性格との関連性を追求してみようとした試みがあったようです。

血液型性格研究入門―血液型と性格は関係ないと言えるか

血液型性格研究入門―血液型と性格は関係ないと言えるか

こちらの本は,どちらかというとポジティブに考える立場で書いてあったように記憶しています。
で,この本で紹介されていた先行研究を見てびっくり。
なんとあのEysenck先生はABO式血液型とパーソナリティとの関連について何本か論文を残しておられるのです。

  • Eysenck, H. J. 1977 National Differences in Personality as Related to ABO Polymophism. Psychological Reports, 41 1257-1258
  • Eysenck, H. J. 1982 The Biological Basis of Cross-Cultural Defferences in Personality: Blood Group Antigens. Psychological Reports, 51 531-540
  • Eysenck, H. J. 1990 "Biological Dimensions of Personality" in Handbook of Personality: Theory and Research (L. A. Pervin ed. Guillford, New York)

もう大昔のことなので,記憶はあいまいですが,上記の文献には一応目を通してみました。とりあえず,国民性の違いをABO式血液型分布の違いにより説明しようとしたもののようです。
内容をみると,1977年の論文では、先行研究からAB型は内向性得点が高い、B型はA型よりも感情的得点が高いと報告する先行研究結果を挙げる一方,イギリスと日本におけるAB型の分布と,A型の割合をB型の割合で割ったA/B比率が極端に異なることを指摘し,両国の国民性の違いを血液型(つまり遺伝的要素)の違いで説明できると提案しています。
続いて1982年の論文では各国(最大21ヶ国)の血液型分布のデータとパーソナリティ要素の平均得点を用いて考察を試みています。不安度の高さ及び神経質得点の高さとB型の割合が多いこと,内向性得点の高さとAB型の割合が多いことが関連しているとの結果を報告しています。
以上からは,血液型と性格との関連性はポジティブに考える余地が出てきそうですが,以後,Eysenck先生はこの手の研究発表をされておられないようだったので,鉱脈としてはハズレ(つまり関連性はネガティブ?)と思われたのかもしれませんね。
で,何でこんなことをいきなり書き始めたかというと,今日,非常勤の同僚S氏と雑談長話をしている中で,血液型と性格の話が出てきたからです。
確か,きっかけは,lionusが授業の提出物*2を期末にまとめて採点するのではなく,随時処理をしていくということを喋っていたら,いきなりS氏が「lionus先生は血液型何型なんですか?」と聞いてきたのです。
聞かれて答えない理由はありませんので(笑),「ん〜A型ですよ〜」と答えたところ,「ほおおおお〜」と微妙なリアクションをしておられたので,「随時課題を処理するっていう堅実さがA型っぽいと思ったんですか?」と尋ねたところ,どうもS氏の印象からはlionusはAB型の「ニオイ」がしていたそうで,その微妙なリアクションは,ちょっと予想外だったなという感じのようでした。
で,S氏の

何で血液型を聞いたかっていうと,僕は血液型性格診断は結構信じてて,で,知ってる人の血液型を当てるの結構上手いからなんですよ。lionus先生は独特のオーラがあるから,だからAB型だと思ってたんですけどねえ〜

という発言から,血液型性格診断についてあれこれ話し込んでしまったわけです。
実のところ,lionusも結構血液型性格診断についてはかつてハマっていたというか,知識があるというか,造詣が深い方であったので,話は思いもかけず盛り上がりました。
何故にlionusが血液型性格診断について知識があったかというと,子どもの頃,家にたまたま*3(血液型性格診断を広めた)能見正比古氏の本があり,活字であれば取扱説明書でも読んでしまう活字中毒気味であった幼少時のlionusがその本を愛読していたからなのです。

正直に告白すると,実は何年か前,無性に懐かしくなり改めて購入してしまいました。例として出てくる有名人がジャイアント馬場とか,時代を感じさせますが,今でも「はまぞう」で検索できるということは,まだ入手可能なのですね。一体何度刷を重ねているのでしょうか。lionusの手元にあるのは,1990年9月15日の第237刷です。
lionusの現在手元にある能見正比古氏の本はあと2冊あります。能見正比古研究をしている訳ではありませんので,上記3冊の本のそれぞれの特徴とか違いについては述べられませんが,1つ目に挙げた『血液型でわかる相性』のカバー裏にある「著者紹介」がちょっと面白いので引用します。

氏と会うと,まず十分間話しているだけでズバリとこちらの血液型を当てられてしまう。過去三十年間,その確率は90パーセントに近い。

90パーセントって,記録をいちいちとっているのか?という疑問は置いておいて,能見氏の本を読むと,独特な視点から人間のパーソナリティを捉えているという点が興味をひきます。
ABO式血液型という枠を使って,人間のパーソナリティの違いを,名人芸的に分類しているなあという印象が,今のlionusにはあります。
心理学徒にとって,ABO式血液型と性格との関連があるといえることは,すなわち,客観的に観測できる行動とか,信頼性の高い性格検査の結果と血液型の違いが関連していることを意味します(意味すると考えます)。
しかし,通常の「科学的」な方法でそれを検討すると,無意味というか無関係であることが示されることが大多数です。
血液型性格診断は,ある意味,能見正比古氏独特の人間観というか人間分類(学)ではなかったかとlionusには思えて仕方がありません。
能見正比古氏の死後,息子さんである能見俊賢氏がその仕事を継いでいる形のようですが,lionus的には,俊賢氏の本は(正比古氏に比べ)あまり読むべき面白さがないなあと思っています。*4
能見正比古氏の各血液型の「性格」や,各血液型同士の「相性」についての記述は,非常に独特だと思います。
面白いなあと思うのは,行動面から説き起こしてあるポイントが多いのです。
どの本だったか忘れてしまったのですが,例えばO型について,南極観測隊のような外界から隔絶された,男性のみの環境(近年は女性もおられるようですが)に長く置かれると,一番に耐えられなくなる(鼻血ブー;笑)とかいう記述がされていた記憶があります。
それが本当かどうかはlionusには分かりませんが,人間を捉える視点が本当に独特で,たまたま血液型による違いという表現をとっただけで,実は能見正比古人間学とでもいえるようなものではなかったかと,S氏とお話していて思い至った次第です。
まあ,能見正比古氏の論に幾分かの説得力があるとすれば,それはすなわち,血液型と性格との関連性を示すことにつながるのではないかと考えられるかもしれませんが,仮に,血液型と性格とに関連性があったとしても,それは数値化(実証化)できる明確な傾きをもつものではなく,能見正比古氏のような「名人」にのみ掬い取れる可能性のある微妙なものなのかもしれない,と感じてしまいました。

*1:しかし,占星をやっていたりするので,lionusの言説は科学的という観点からは一貫性に欠けるといえるかも(大汗

*2:S氏とlionusは同じ科目を担当している。

*3:多分lionus母が購入したのでせう。

*4:この記事を書くに当たり,能見俊賢氏のお名前で検索したところ,2006年にお父上とほぼ同じ年齢で亡くなられていたようです。びっくり。