原爆体験 六七四四人・死と生の証言(データベースは語る。)
- 作者: 濱谷正晴
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/06/07
- メディア: 単行本
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膨大な記録をデータベース化し,主にクロス集計による統計表により,被爆者の「心の傷」と「体の傷」について明らかにされています。
自由記述回答が引用されている部分が多く,被爆体験の記述に比較的免疫があるつもりのlionusでも,平静さを保つため,時にページをめくる手を止め,しばらく視線を空に投げかけてやりすごすことがありました。
抜粋された活字でも読んでいて「くらくら」する時があるのですから,ローデータを扱っていた著者の濱谷先生をはじめとする一橋大グループの方の困難とそれを乗り越えるエネルギーは想像に難くありません。
まあそれはともかく。
石田忠先生をリーダーとする一橋大グループによる,被爆者の被爆後の生き方(生き様)に関する分析は,緻密かつ膨大で,正直,どこから手をつけてよいか戸惑うことがあります(ありました)。本書は,クロス集計表による統計的記述と,自由記述回答の引用をうまくブレンドしながら,被爆者の戦後の苦闘について巧みにまとめられていると思います。
あと,余談ながら,大量の自由記述を含むデータの整理方法の事例としても大変優れた文献であるとも思いました。
*1:対象者の数が合わないじゃないかと思われるかもしれませんが,無回答等,データに不備があるものを除いたものを対象にしていたようです。