lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

最適なつもり。

「負け組」の拡大再生産を防げ!(日経BPonline)
経済学のゲーム理論と脳機能測定とを絡めた記事なのですが,記事全体の流れとは独立して,以下の部分が面白いと思いました。

経済学には「合理的主体」という言葉がありますが、常に合理的な主体として私たちは振る舞っているか、というと、決してそんなことはない。

そうだよね。あくまでも「合理的」に行動するっていう前提で数理モデルを考えるわけですが,そうはいかないのは明らかなことで。しかし,それでは割り切れないというか学問にならんので,そう仮定した上でモデルを考えるんですよね。

そこから、近代経済学のモデル批判が出てきます。2008年現在のニューラルエコノミクスの趨勢は「人という生き物が、いかに非合理・不合理にできているか」の強調、つまり「合理的主体」の否定にあります。

ほうほう。ニューラルネットワークならlionus猫でも聞いたことがありますが,ニューラルエコノミクスなんてぇのがあるんですか。

しかし、上にも記したように、脳機能測定から私が得た暫定的な結論は人間行動の「非合理性」というより、感覚鈍磨などによって、最適ではない選択をそれと認識できずに行ってしまう、人間行動の容易な愚行化、すなわち「準合理的に行動する主体」を記述する数理が面白いのではないか、というものであります。

ああ〜!これいいですね。「準合理的に行動する主体」。
気に入った。

「めちゃくちゃなことをやってやろう」「不条理なことを演出しよう」などという動機ではなくて、ご本人としては極めて真面目に「これで一番いい」と思ってやったことが、実は何かを大きく見損ねていて「局所最適・全体崩壊」になっているのではないか

・・・心理屋としては,「全体崩壊」なんて聞くとつい,「ゲシュタルト崩壊」なんて想起してしまう訳ですが(笑
まあそんなことはともかく。

冷静な第三者から指摘されれば「愚行」は愚行として評価が可能になりますが、その指摘を受けるまでは、当事者はそれが「ベスト」だと思っている、最良手を打ったつもりでいる、というところが重要なところです。
言ってみれば、酔っ払い、あるいはこれが各種のトレーダーでもよいわけですが、「認知状況に限界のある動作者」は常に“セカンドベスト”の選択をしているわけですね(たとえそれが、電信柱への詫びとか、パンツの上げ損ね、であるとしても)。

何でパンツやねんと思った方は,このコラムの過去ログのページをご覧ください(爆
人間は,いわゆる「理性」が働く存在であるとともに,「動物」でもあります。
上記引用部分の「“セカンドベスト”の選択」っていうのは,まさに「心理学的」な研究対象だな〜と思った次第です。
人間は合理的or非合理的,言い換えれば白黒で割り切れる存在ではなく,セカンドベスト,準合理的な存在と考えるというのはなかなか示唆的だと思いました。