lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件(事例を積み上げエッセンスを抽出する。)

日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件

日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件

はまぞう」で検索したら,文庫にもなっていました。
「優秀企業」を定義し,それに当てはまる企業を探し,それらの企業に共通の要因を検討しまとめたものです。以下にそれらの共通要因を抜き出してみます。

第一の条件 分からないことは分けること
第二の条件 自分の頭で考えて考えて考え抜くこと
第三の条件 客観的に眺め不合理な点を見つけられること
第四の条件 危機をもって企業のチャンスに転化すること
第五の条件 身の丈に合った成長を図り,事業リスクを直視すること
第六の条件 世のため,人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること

第一の条件の部を読んで,以前観たNHKスペシャルを思い出しました。
長寿企業大国にっぽん

日本には、100年を越える歴史を持つ長寿企業が数万社ある、という。
実は、日本は知られざる「長寿企業大国」なのである。
なぜ日本ではこんなに企業が長生きするのか―。研究者たちの調査から浮かび上がってきたのは、「決して“本業”をはずれない」「世の中が変わったら、“本業”からはずれない中で、社会のニーズに合わせていく」「危機は何十年かに一度襲ってくるもの。そこから逃げずに企業そのものを変革する」、という共通の特徴である。
グローバル化、急成長、シェアNO.1主義がもてはやされる中、地味だがしたたかに、社会に合わせて、“細く長く”経営を続ける長寿企業。“技術”をムダにしない経営哲学。
作家の幸田真音さんが、長寿企業を訪ね、長く続く秘密とエッセンスを、解き明かしていく。

分からないことは分けて,自分の本業と思われることにのみ力を注ぐということです。
Nスペはこの本(2003年)よりも後の放映(2007年)ですから,番組企画に本書を参考にした(ひょっとすると資料のひとつとして挙げられていた?)かもしれません。
本書の巻頭には,次のように記されています。まさに言わんとすることはほぼ共通しています。

自分たちが分かる事業を,やたら広げずに,
愚直に,真面目に
自分たちの頭できちんと考え抜き,
情熱をもって取り組んでいる企業

本書のその他の条件も,なるほどと思われることばかりでしたが,第六の条件のところは,企業に属していないlionusにも考えさせられることが多々ありました。
そのひとつに以下の記述があります。

「会社は誰のためのものであるか,誰のために存在するか」*1と問い直したら,今度はどうであろうか。優秀企業についていえば,その答は,株主ではない。顧客である。顧客にとっての付加価値を持続的に提供することが会社の存在意義である。顧客,すなわち,提供する製品やサービスの市場をないがしろにする企業は,そもそも存在価値がない。(中略)
製品・サービス市場が競争的であれば,顧客に評価される企業は生き残り,そうでない企業は退出させられる。だから,顧客に評価される企業へと導く経営者あるいは企業文化が競争の中で生き残っていく。

読みながら「大学は誰のためのものであるか,誰のために存在するか」なあ・・・と考え込んでしまいました。
ただ,押さえておくべきポイントとして,上記のことは「市場が競争的である産業」について当てはまることであり,大学のような市場が「競争的」とはいえない(行政による規制が厳しい)分野については議論を別にしないといけないと思います。
しかし,大学の社会貢献が盛んにいわれる現在では,このことはしっかり念頭におくべきことであると思います。
近視眼的な上っ面の社会貢献は不要です。*2社会に有用な人材を輩出すること,社会に受け入れられる研究をすることが大学にしか出来ない社会貢献*3だと思います。

*1:太字部は本文中では傍点

*2:イロイロあってアリバイ的にしなければいけないという事情もありますが・・・まあ,この本的にいえばそういうところは優秀××ではないということになりますがね。

*3:あとはそのままでは社会に出せないD*Nをお預かりして少なくとも4年間面倒をみるとか。出来ればそのD*Nの更生とか能力開発もできたらいいなとか。大声では言えないので注でコソーリと(苦笑)。