lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

ホンモノの文章力―自分を売り込む技術(無手勝流厳禁。)

この前期の某非常勤先のクラスで,年配(60歳前後?)の女性の編入生受講生の方がおられ,授業終わり頃に何かしらお話する機会がありました。
英語の先生からEメールを送るよう言われたがどうしたらよいのかとか(大学のEメールシステムについて講義で扱う直前でした),レポートの文字数を数えるにはどうしたらよいのかとか,そんなお話でした。
ある日,他の科目でレポートが課されたのだが,どのように書いたらよいのか悩んでいるというお話をされたので,その日ちょうど持っていたこの本を示し,少々アドバイスをさせていただきました。

ホンモノの文章力―自分を売り込む技術 (集英社新書)

ホンモノの文章力―自分を売り込む技術 (集英社新書)

本の題名等,メモをされるのかな?と思ったのですが,「ああそうですか」的な感じでその日は終わりました。
大丈夫かなぁ,私の言っていることは通じたのかなぁと少々心配だったのですが,その後,他の先生にも同じようにレポートの書き方が分からないと相談したら,同じ著者の別の本のコピーを渡された,やっぱりlionus先生のおっしゃる通りでした,と言ってこられました。
この編入生の方は,短大卒業後,某大企業でずっとお勤めされていて,エッセイも出版されておられるなど優秀な方のようにお見受けします。したがって,はっきりとは出さないけれどもそれなりのプライドはお持ちで,自分の娘くらいの年頃の人間が講師の立場にあることに当初は少々違和感がおありだったのかもしれない,したがってlionusの言うことを直ぐには納得されない場合もあったのかもしれないなと感じました。
まあそれはさておき,上記の本はlionusにとっても目からウロコのよい内容でした。
メモ代わりにポイントを以下に引用しておきます。
小論文の書き方:

「型」は四部構成で
[1.問題提起]
エス・ノーの問題提起をする。課題が,直接的にイエスかノーになっていないときには,ここでイエスかノーに転換する。文章が出題されて,それについての意見が求められているときには,「課題文は……と言っているが,それは正しいか」といった形にする。
[2.意見提示]
エスとノーのどちらの立場を取るかを示す。ここは,「確かに……,しかし〜」というパターンで書くと書きやすい。つまり,イエスの立場を取りたいときは,「確かに,ノーの面もある。こんな場合だ。しかし,自分はやはりイエスのほうが正しいと思う」というように。こうすることによって,視野の広さをアピールして,一方的な文章になるのを防ぐ。同時に,問題点をしっかりと理解していることを示し,反対意見を踏まえた上で,論を深める。(中略)目安は全体の30〜40パーセントの字数だ。レポートなど,制限字数が多いときには,ここをいくつかの段落にして,自分とは反対の立場の意見を紹介しながら,反対意見の根拠を示したのち,それに自分は反対であることを明確に語る。
[3.展開]
エス・ノーの根拠を示す。小論文やレポートの中心部であって,ここの展開の仕方によって,小論文やレポートの価値が決まる。問題となっている事柄の背景,原因,歴史的経過,結果,背後にある思想,実現するための対策など,表面的ではない部分をできるだけ深く掘り下げて書く。全体の30〜40パーセントの字数で。(中略)レポートなど,制限字数が多いときには,ここをいくつかの段落にして,複数の角度から判断を示す。
[4.結論]
もう一度全体を整理し,イエスかノーをはっきり述べる。余韻をもたせたり,道徳的目標などをつけ加えたりする必要はない。

自己推薦文の書き方:

[1.自分の長所をずばりと書く]
「私は,○○に自信がある」「私は○○な性格だ」といったことを書く。(中略)どうしても,謙虚でいたいと思うのなら,「○○だけには自信がある」というようにするといいだろう。
[2.自分の長所の裏づけを書く]
ここでは,どれほど,?で書いたことが事実であるかを示す。(中略)能力を売りものにするときには高校(大学)時代,あるいは転職希望者は前の会社での実績を中心にするとよい。(中略)そのような活動がまったくなければ,「趣味」を書くこともできる。(中略)文学関係を志望しているときには,「読書量には自信がある」というように書くこともできる。性格を売りものにする場合には,それを示すようなエピソードを書く。
[3.自分の長所がいかに仕事に適しているかを書く]
その長所がどのように志望先に役立つか,長所を生かして大学・会社でどんなことができるか,どんな分野で自分を生かして勉強や仕事に専念できるかを示す。
[4.大学・会社に入るに当たっての覚悟を書く]
簡単に言えば,「全身全霊を込めて,勉強(仕事)に当たりたい」といったことを書くとよい。

志望理由書の書き方:

したいことを1つにまとめる
[1.「したいこと」をずばりと書く]
「私は,○○をしたいために,△△大学(会社)の入学(入社)を志望する」というように直接的に書く。目標としている研究や仕事があれば,それをはっきりと書くほうがよい。
[2.志望するようになったきっかけ]
ここで熱意を示す。「子どものころからその仕事が夢だった」「本を読んで魅力を感じた」「高校(大学)で,それを学んだ」「貴社の△△の活動に感銘を受けた」などが,もっとも書きやすい。
[3.具体的にしたいこと]
大学や会社でしたいことが決まっているときには,ここで,具体的に内容を書く。(中略)「大学で勉強した○○を生かして,△△の仕事をしたい」などの説明が好ましい。内容をしっかりと見定めていること,知識がきちんとあることを示すのがポイントだ。ただし,なかには,「がむしゃらに学びたい(働きたい)」という熱意だけで,何をどうしたいか具体的なイメージを持てない人もいるだろう。そんな人は,これからしようとしていることが,いかに将来的に有意義であるかを説明すればよい。
[4.志望大学・会社の良い点]*1
志望している大学や会社が自分の「したいこと」に合っていること,勉強や仕事に最適の場であって講座や設備が整っていることを説明する。ここで,しっかりと志望校・志望会社について知識を仕入れていることを示す必要がある。そして最後に,学校や会社に入ってからの覚悟を加えるとよい。「私は全力で仕事に当たりたい」といった具合だ。

*1:会社などの場合は,あえて弱点を挙げ,そこを補強するには…といった展開もあるそうです。しかし諸刃の剣なので,一般的にはここに引用したパターンがおすすめだとか。