飼う予定はないけれど。
- 作者: 兵藤哲夫,柿川鮎子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/05/20
- メディア: 新書
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「ゆりかごから墓場まで」,様々な場面で直面するペットの問題に,動物病院の名院長がズバリ答えます!
ペットを飼っている人,または飼うつもりのある人向けの本のようです。
lionusは今のところペットを飼うつもりはないのですが,動物病院の経営的なところが興味深かったです。
現状では,診察力のある優秀な獣医師でも利益を上げられない仕組みになっているのが問題です。
例えば下痢をしたと連れて来たとき,動物の様子や飼い主との問診から一晩,絶食させて温かくして眠らせておけば治ると判断できる獣医師は実は腕が良い。(中略)
しかし,今のマネジメントシステムは,そうした名医をやっていたら診察料が得られない。診察して,処置して,薬を出して,それが料金となって加算されるからです。(人間の)医者の場合は診断を重視しており,例えば夜中に具合が悪くなって病院に電話をして処置を聞いた場合,次回診断の際に電話での診察料金も請求できる仕組みになっています。
私はもっと診断を重視した料金体系にしていくべきだと考えていますが,今のところ,診断だけでは病院経営が成り立たない。
「話を聴くだけ(相談するだけ)」ならタダという発想と共通するものがありそうです。
その他,ペットの安楽死についての記述は意外なものがありました。
最近はペットの犬猫の長寿化(高齢化)にともない,ペットの介護問題が深刻化しているとか。家で介護できなくなった高齢犬・猫を保健所に連れてくる飼い主が増えているそうです。それだけ聞くとひどい飼い主だという印象ですが,飼い主の心身に限界が来てやむを得ず,不本意ながらというケースがしばしばあるそうです。飼い主も本犬(猫)もギリギリの状態にまで追いつめられているのなら,安楽死で安らかに・・・と思ったのですが,「今の先生(若い獣医師)は安楽死をしてくれません」と,職員談として書いてあるのです。
私はそれを聞いて,愕然とした。そこまで家族を追い込んでしまった獣医師は何たる怠慢。自分だけ安楽死処置をしないでよい顔をして,ツケはみんな行政・保健所へもっていく。(中略)MRIだCTスキャンだと設備ばっかり整っているだけで動物のための医療をしていない。(中略)そして,動物介護問題はこれからももっともっと深刻になるだろうとつくづく感じました。
何故安楽死処置をしてくれない獣医師がいるのか,本書では分かりませんでしたが,非常に意外な話でした。
この本の筆者は「動物のための医療をしていない」と憤慨しておられますが,そもそも顧客である飼い主(人間)のためにもなっていないと思いました。