日本の参謀本部(battleとwar。)
- 作者: 大江志乃夫
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1985/05/23
- メディア: 新書
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国際社会においてその目的とするところは,時刻の政治目的を達成することである。軍事はその目的達成の一手段にすぎない。参謀本部は軍の最高将帥の軍事的スタッフである。政略と戦略との関係,政治の手段としての暴力行使である戦争が目的とするものと暴力手段である軍事力との関係について,明確な認識なしには最高将帥の軍事的スタッフの任務をはたすことはできない。
しかし,著者は日本の参謀本部について以下のような特徴(短所)を指摘しています。
ドイツ参謀本部の起源が兵站幕僚部にあったのとちがって,日本の参謀本部は戦術中心の思想のうえに成立した。戦術中心の作戦は,正確な軍事情報ぬきには成立しないのにもかかわらず,情報操作,情報作為によって自己の政治的地位を高めてきた山県のもとでそだった情報将校たちは,正確な軍事情報の入手よりも,情勢を作為するための謀略に重きをおく傾向をつよめた。作戦部は情報部の情報活動に信頼をおくことができず,作戦に必要な軍事情報活動を作戦部自身がおこなうことになった。
情報活動は,情報部がおこなう謀略活動と作戦部がおこなう軍事情報活動とに二元化した。
それぞれ持っている情報がバラバラでは全体の足並みが揃うわけはありませんね。
しかも,
作戦部の情報分析は,自軍の作戦行動の様式でもって敵軍に対する情報を評価するという楽観主義*1におちいりやすい。
せっかく集めた「情報」も解釈の甘さで役に立たなかったということでしょうか。
仮に謀略を駆使してbattleに勝ってもwarで負けては意味が無いということを考えさせられました。
*1:自己の行動様式にてらしてのみ情報を解釈し自己の方針に有利なように情報を判断する主観主義。