イルカが知りたい―どう考えどう伝えているのか (講談社選書メチエ)(擬人化。)
イルカが知りたい―どう考えどう伝えているのか (講談社選書メチエ)
- 作者: 村山司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/02
- メディア: 単行本
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イルカについて,解剖学的見地や認知実験などの立場から多角的に記述してあります。研究者による書ですが,小難しく書いてないのでとても読みやすかったです。
帯にある”三段論法”とは,条件付けを用いた実験を通じ,イルカは「AならばB,BならばCのとき,AならばCという関係を構築できる(推移性)」らしいことを確かめた,ということです。このことから,イルカはかなり知能が高いと考えられますが,推移性の逆である「AならばBのとき,BならばAということ(対称性)」は出来なかったそうです。このことについて,著者は「(生活してゆく上で)彼らがものごとを遡って考える経験が少ない」からであろうと考えています。
動物には自らの生活(生態)に必要があって発達した能力なり,システムがある。彼らに必要でない部分は当然経験も不足しているし,訓練する機会もないわけで,「賢く」なりようがない。そういうことだから,生態のシステムが異なるイルカとヒトで知能くらべをしても本当は仕方がないのかもしれない。
「イルカって賢いんでしょう?」
「うん,部分的にとっても」
まあ,このくらいだろうか。
動物をみる際には,どうしても「擬人化」,ヒトの思考の枠組みをあてはめて考えてしまいがちですが,それは彼らにとっては迷惑なことなのかもしれません。