lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

夏のNスペ覚書。

NHKスペシャル「被爆者 命の記録」〜爆心1キロで被爆した人々の60年〜(8月6日放送)
NHKスペシャル「赤い背中」〜原爆を背負い続けた夫婦〜(8月9日放送)
それぞれ,被爆者個人を取り上げ,各人の苦闘を描くことにより,原爆が60年経った現在でも人間を痛めつけていること(罪)を告発することがテーマのようでした。
前者の方は,広島一中の当時1年生の方を中心に取り上げられていて,久しぶりに母校の映像が出てきて懐かしかったりしました。また,広大原医研と放影研がそれぞれ被爆者や被爆二世の健康調査(放射線の人体影響を調べるため)をしていることが取り上げられていたので,こういうデータかと改めて確認できました。*1
60年経って近距離(1㎞未満)被爆した人々に,重複がんが多発すること,そしてそれは放射線による染色体の損傷が原因であると考えられることが示された後で,ふと悪い予感がしました。続いて,孫が皆ぜんそくなど体がどこか弱いことを,自分のせいではないかと不安がる近距離被爆者の方が取り上げられました。番組中で放影研被爆二世の継続調査により放射線による次世代への影響は確かめられていない,と否定されましたが,私は,昔,「原爆はうつる」「子どもに影響する」などと言われ被爆者が結婚差別を受けたという話を思い出しぞっとしました。
確かに,放影研コメントにより”ほとんど”否定されましたが,60年目の節目の番組の締めがこれか,と暗澹たる気持ちになりました。
どうしても扱うのであれば,そういう(子孫への影響という)果ての無い不安を惹き起こす原爆の罪深さを強調するような取り上げ方をして欲しかったと思います。そういう”含み”が製作者にあったとしても,視聴者にどれだけ伝わったのか。ただ,「へぇ,1㎞未満で被爆すると染色体がボロボロになるんだぁ。だったら子どもとか心配だね。」という印象を残す可能性があるとは思わなかったのでしょうか。少し前何でもかんでも遺伝子の所為にしたがる風潮がありましたから,余計に心配です。
他方,NHKスペシャル「こうして日本は焦土となった」〜都市爆撃の真実〜(8月11日放送)は以前期待していた通り,見ごたえのある内容でした。
まず日本とドイツが無差別爆撃の禁止が定められている「空戦法規」を破ったんですね。だからといって太平洋戦争における対日都市爆撃が正当化されるという訳ではないのですが。
180都市も標的になっているとは思いませんでした。実際は66都市が爆撃されたところで終戦になったのですが。
1944年末まで軍事・工業目標に絞る精密爆撃を主張する声が米軍内でも随分あったということはさすがだと思いました。しかし,その精密爆撃が成功せず,新型爆撃機B29の大量生産と新型焼夷弾の開発という大波に押され,無差別の絨毯爆撃に方針が転じたというのは本当に,悲しいことです。

  • (無差別爆撃をしないという)方針に変更は無い
  • 目標は軍事施設であった
  • 今後も目標の変更はない

いつか,何度も,聞いたことのあるセリフですが・・・

*1:医学論文の形では多数見ているが,映像で示されると実感がある。