lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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内部統制システムの法的展開と実務対応

内部統制システムの法的展開と実務対応

内部統制システムの法的展開と実務対応

「第I部 内部統制を理解するための基本理論」と「第II部 企業における内部統制の実務と弁護士・公認会計士の関与の実際」の2部構成から成る本です。理論と実務、広く浅くかもしれないが網羅的である印象を受けました。
第I部で、会社法上の内部統制概念と金融商品取引法上の内部統制概念の関係について整理されているのはすっきりしました。

pp.51-52
まず,会社法では株式の上場の有無を問わず株式会社の規模の規準に基づく要請として,また一定の機関設計(たとえば監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社となること)に伴う措置として,同法にいう内部統制システムの整備を求める(会社348条4項,362条5項,399条の13第2項,416条2項)。これに対し,金融商品取引法は上場会社に係る財務報告の適正確保の観点からその目的に資する体制として,同法にいう内部統制システムの整備を求めるものである(金商24条の4の4第1項)。それだけに,両者の間には対象会社の範囲はもとより制度目的の点においても大きな相違があるかのように見える。

pp.52-53
しかし,会社法において内部統制システムの整備が義務づけられる株式会社のうち上場会社では,会社法上の内部統制システムの一要素である「法令の遵守」のなかに,当然遵守すべき法令として金融商品取引法が含まれることはいうまでもない。その意味で,上場会社に関するかぎり,会社法の求める内部統制概念は,金融商品取引法上の要請を包摂するものと考えることができる。他方で,金融商品取引法上の内部統制システム整備義務の適用を受けない株式会社にあっても,会社法上,適時にかつ正確な会計帳簿を作成すべき義務が課され,決算公告義務も法定されている(会社432条1項,440条1項)。このことから,金融商品取引法の射程から外れる株式会社にも,財務報告の適正確保は会社経理の正確を担保するための制度的枠組み,すなわち法令遵守の一環としてその整備が要請されているとみるべきであろう。
もとより,上場会社の場合は,非上場会社とは異なり,証券市場を利用する立場にある企業として投資家の投資判断形成を公正ならしめるための適時かつ完全な情報開示が要請されるので,上場会社に求められる内部統制システムは非上場会社のそれとは果たすべき役割や機能に違いがあることも事実である。それが,金融商品取引法が上場会社を対象に財務報告に関する内部統制整備等を定める理由であろうが,広義においては,株式会社一般について,財務報告の適正性確保を図るための体制が会社法の求める内部統制システムの一部として組み込まれていると考えることもできよう。

ものすごく大雑把ですが、金取法の内部統制システム整備義務は、会社法の求める内部統制システムの構築に包含されると考えていいのでしょう。上場している・いないにかかわらず、株式会社なら財務も業務もちゃんとやってるよ〜と言えるために内部統制システムをしっかり作っておきなさいよ、という感じかな。
その他第I部では、代表的な事例について判例の分析がコンパクトにされているのも参考になりました。
目次が盛り沢山で細々した内容なのかな、読めるかな〜と思いましたが、自分としてはかなり面白く読めました。