lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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災害弱者と情報弱者 3・11後,何が見過ごされたのか

災害弱者と情報弱者―3・11後、何が見過ごされたのか (筑摩選書)

災害弱者と情報弱者―3・11後、何が見過ごされたのか (筑摩選書)

Amazonのレビューでは評価低めでしたが,データ分析手法を駆使したアカデミックな内容で,lionusにはなかなか興味深い内容でした。
一般に高齢者や低所得者が災害弱者といわれていますが,東日本大震災もやはり通説通りで,なおかつ本書では災害弱者≒情報弱者であると検証しています。
それだけなら,特に目新しい話ではないのですが,本書では情報弱者=いわゆるデジタル・ディバイドだけでなく,切り口を変えると別の種類の情報弱者も浮かび上がってくることが示されています。
特にへぇと思ったのが,情報をウェブ(のみ)に頼るとトピックスが偏ってしまうかもよ?という指摘です。
(1)新聞,(2)ヤフートピックス,(3)ブログ論壇サイト,(4)トゥギャッター(Togetter),そして(5)ツイッター(Twitter)のデータについて,2011年3月11日からの3ヵ月間,扱われたトピックスについて分析をしたところ,(1)新聞が比較的多様なトピックスを扱っていた,という結果になったというのです。

p.151 ウェブメディアよりも新聞のほうが多様であったという結果は,やはりジャーナリズム的な編集行為の重要性に目を向けさせます。こうした機能を伝統的に培ってきた伝統的メディアである「新聞」の内容は,意外なことに人々が自由に発言する,ツイッターのような自然状態よりも「多様」であり,またこれは当然のようですが,逆に情報の「編集」が極端に介在する政府発表や科学組織の意見よりも多様だったのです。「ウェブの自由な発言空間にこそ真実がある」と考えてしまいがちな向きにとっては,「情報空間全体をできるだけ広く把握し,その成果を人々に公開する」という,マスメディアのジャーナリズムとしての役割を再検討・再評価する必要があります。

p.152 ただし,既にデータと共に示したように,「新聞のみに接している場合よりも,新聞に加えてウェブにも接した場合のほうが,多様な情報にアクセスできる」ことが明らかになっています。これは,単体では,新聞よりもウェブのカバー範囲は小さく,多様性の点で劣るのですが,情報空間全体においてはそれぞれのカバーしている範囲が異なるために,伝統的メディアとウェブメディアの,どちらの情報にも接したほうが獲得できる情報は多様になるのです(これは,ちょっと考えれば当たり前のように思える事柄であり,今更わざわざ言われるまでもないと考える方も多いかもしれません)。

p.188 いつも「さまざまなものを,バランス良く」摂取するほかはないのです。

結局それかよ!という感想になってしまうのですが,まあ確かにそうで,”マスゴミ”は頼りにならん!などといって,ウェブ一辺倒になるのは視点が偏るよということが分かった,ということですね。