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雇用法改正 人事・労務はこう変わる(日経文庫11)

雇用法改正 人事・労務はこう変わる (日経文庫)

雇用法改正 人事・労務はこう変わる (日経文庫)

2012年の労働契約法および労働者派遣法,高年齢者雇用安定法の改正を受け,誤解されやすい点を中心に書かれた人事・労務担当者向けの本のようです。
この本の著者による,日経文庫の本は複数冊読みましたが,全体的に実務的にサクサク書かれている印象があったのに対し,本書では2012年の法改正について,

p.33
有期雇用者の急激な増加によって,雇用不安定と経済的な貧困者の増加などの問題が生じ,何らかの対策が国の政策としては必要でしょう。しかし,その方法として今回のような「無期雇用転換申込制度」の創設という,採用の自由を制限するいわば強制採用のような「みなし雇用」方式を中心とすべきであったかについては疑問があります。これは従来わが国企業の安定した雇用体系を混乱させ,かえって新たな問題を引き起こす改正ではないかと思われます。

と,結構はっきりとご自身のスタンスを書かれているところが少々特異的にみえました。
そして2012年労働契約法改正は「有期労働の雇止め法理の立法化」として,そもそも「雇止め」とは何か,以前からの判例をひいて綿密に検討されているところは,有期労働者でも不合理な「雇止め」はだめよという判例が従来より蓄積されており,それなりに企業側と労働者との間にバランスをとっていたのに,これをわざわざ立法化して労働者側が一方的に有利になるようにするのにどれだけの効用があるのか?という疑問が感じられ,面白かったです。