lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

「信じられないミス」はなぜ起こる―ヒューマン・ファクターの分析/安全管理の現場力―スタッフへのアドバイス(中災防新書というシリーズ。)

2月11日の記事の本からみで、中央労働災害防止協会が出している中災防新書というシリーズがあることを知り、図書館からいくつかピックアップして読んでみました。

労働災害・労働安全におけるヒューマン・ファクターを考えるための一通りの知識が網羅されているように思いました。
様々な知見が盛り沢山なのですが、個人的に印象に残ったのは、「ヒューマン・ファクターの連鎖」という考え方です。

p.37
一つの判断をするときにはいくつもの選択肢があり、各段階での判断の理由があるはずである。判断の背景には、プラント全体の理解度、手順書、それまでの教育訓練により築き上げられた技能や熟練度、クルーのパフォーマンス、組織のもつ雰囲気、表示や操作盤の問題等、多くの要因が影響を与えている。

一つの鎖のその先がつながりうる選択肢には複数あるということです。

p.37
どんな要因を除去すれば、この事故は確実に防止することができたであろうかということが大切であって、発生した事象の重大さに驚いて、現場の作業員だけを非難し、責任をなすりつけることではない。時間を逆行しながら実施する従来の事故調査方法は、科学的手段により原因を追究するうえで重要なことであるが、同種事故の再発防止のためには時間を巡幸する考え方で、不具合の連鎖の一つひとつを丁寧に組み直してみる作業時に必要になってくるのが、ヒューマン・ファクターについての正しい定義であり、広い知識、人間を見る正確な視点である。

その結果に至った、ただ一つの物事のつながりをさかのぼって調べていく方法ではなく、時間軸にそって順行しながら当事者の身になって考えていく(各段階でとり得たが、その時は選ばなかった選択肢も検討するとか)やり方と理解しました。
結果から逆行して調べていくやり方だと、いわゆる「後知恵バイアス」が入ってくることもありがちでしょうしね〜

安全管理の現場力―スタッフへのアドバイス (中災防新書)

安全管理の現場力―スタッフへのアドバイス (中災防新書)

著者の先生は「(株)東芝において37年余り安全衛生を担当」されていた方だそうで、主に製造業の安全管理スタッフの持つべき知識について上手に整理されている本という印象でした。内容が具体的で門外漢が読んでも分かりやすいと思いました。