カラスはなぜ東京が好きなのか(そこが繁殖に適しているから。)
- 作者: 松田道生
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2006/10/19
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (9件) を見る
カラスを追いかけて緻密な記録をされているという点では、以前読んだ『カラスの教科書』と同じです。→『カラスの教科書』の著者のお顔も拝見できる記事がつい最近、東洋経済オンラインにありました。
終章「カラスが教えてくれたこと」で、ヒトの(野生)動物との距離感について書かれていたところは考えさせられます。
p.294
カラスを観察することによって、名前がわかったら始まるバードウォッチングをしていることに気がついた。カラスのおかげで、あこがれの諸先輩の領域に少しでも近づいたことになる。これもカラスのおかげである。
声を大にして言いたい。野鳥の名前がわかったというだけでバードウォッチングの楽しみがすべてだと思っているならば、実にもったいないことだ。名前がわかったところから始まるバードウォッチングを体験すれば、もっと世界が広がり深まることだろう。
pp.295-296
「タマちゃーん」とアザラシに手を振るように「オオルリって可愛い」というバードウオッチャーを増やしても自然保護には結びつきにくいこともわかった。このようなバードウォッチャーは「蚊に刺されるのは嫌だけど鳥を見たい」や「ヘビは嫌いだけでどワシやタカが大好き」という、自然のしくみを無視した発言を平気でしてしまう。そして、一般常識からかけ離れた感覚は、自然を破壊してまでも野鳥を追いかけたり、野鳥の習性や生活を無視して己の欲望のままに野鳥を追いかけて世のひんしゅくを買うことになる。
p.297
カラスとのつきあい方は、本書をここまでお読みいただいた方にはおわかりのように、「緊張感」と、いかに影響を与えないかということにつきる。
p.297
現代人の野生動物への接し方は、アザラシのタマちゃんに見られるように「タマちゃーん」と声をかけ手を振り、まるでアイドルのような接し方をすることと、ニホンザルやツキノワグマをカラスと同じように人を襲う恐怖の動物として、センセーショナルに取り上げることとに二極化している。現代人は、野生動物に対する接し方がとてもアンバランスなのだ。
p.297
野生動物とのつきあい方は、相手の生活に干渉しないという鉄則が必要である。そして、相手を横目で見る程度、適度な距離をとって動きを見ているくらいの緊張感が必要なのではないだろうか。野生動物に対する適度な緊張感の持ち方を我々は忘れてしまっているのだ。