lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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数字を追うな 統計を読め(「統計”値”を読む力」。)

数字を追うな 統計を読め

数字を追うな 統計を読め

総務省統計局にお勤めの先生が書かれた「統計リテラシー」を養うための統計読み物です。

p.153
現代は、新聞、テレビ、ネットなどを通じて数多くの統計数字による情報が溢れています。しかし、その情報の見方や信頼性など「統計を読む力」を持っていなければ、得られた情報に対して、正しい判断などできません。特に仕事の面において統計を正しく読むことは、会社の利益を得るためにも大変重要です。実際に「統計」は経済の分野だけでなく、たとえば医療では新薬承認、製造業では品質管理、保険では商品開発などと多方面で利用され、それらの発展に欠かすことのできない存在となっています。

p.153
したがって、統計をマスターすることは、微分積分よりも実社会で応用が利くといえるでしょう。

ちょっとこの記述にはひっかかりました。
上記主張には同意ですが、本書で扱われている「統計を読む力」と、統計でデータを分析する/分析結果を理解すること(=「実際に」で始まる文で例示されている領域の話)が区別されていないように思えました。
確かに、まえがき(p.2)で「本書の特徴の三つめとして、正規分布標準偏差、分散、回帰分析などといった統計『学』の解説書ではないという点が挙げられます。学問として数値をどう解析するかを解説するその一歩手前の『統計』として表の上に並んだ『数字』をどのように読み解くかにポイントを絞って解説していきます」と書かれていて、本書はその通りの内容なのですが、途中でいきなりその「統計『学』」の知識を必要とするデータ分析や検定等の活用例を出してきて「統計をマスターすることは」「実社会で応用が利く」と書かれるのは、やや筋違いのようにも読めました。
しかし本書は統計局の”中の人”が、統計値をみる際の目のつけどころを解説した、「統計”値”を読む力」をアップさせるための本として読むならそれなりに収穫はあります。