lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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裁判官の心証形成の心理学―ドイツにおける心証形成理論の原点(昔の「心理学」なのには留意して。)

裁判官の心証形成の心理学―ドイツにおける心証形成理論の原点 (法と心理学会叢書)

裁判官の心証形成の心理学―ドイツにおける心証形成理論の原点 (法と心理学会叢書)

1948年に出版されたドイツ語の原著の翻訳と、訳者解説、関連する論文がいくつか所収されています。
本の順序通り翻訳された本文から読んだら、何が何だかちんぷんかんぷんで面喰いました。
まず訳者解説を読むほうが吉かもです。
また、本書で出てくる「心理学」とは、哲学とまだあまりきちんと分化していなかった頃の古い心理学なので、その点を留意して読む必要はあります*1
あまりにも難しくて理解できていないのですが、要は論理的客観的に考えて判断しているけれども、その、えいやっと決めて判断する”傾き”や”勢い”はどうなんですか?何なのですか?ということではないかと思いました。

p.5
いろいろな間接事実を因果的判断によって適切に結びつける思考作業が問題になるが、原因から結果が推論されることもあれば、その逆のこともある。しかし、ある結果はいろいろな原因を持ちうるし、原因はいろいろな結果を惹き起こしうるのであるから、法的判断に関連性のある事象が「唯一の可能な原因あるいは結果であると証明されるかどうか、したがって他の原因もしくは結果が不可能ないしきわめてありうべからざることとして除外されるかどうか」の点如何にかかってくる。この証明に成功するまでは、被告人が犯人であることは疑問とされなければならない。これに成功したときに、裁判官は、彼が犯人であることにつき「確信を抱く」。

でもね、

p.50
人がある「認識」を自分の行動の基礎にしようと決心したならば、そのとき正に一つの真実ないし心証がそこにあるのであって、真実の価値内容はもはや議論の対象にはならない。

ぶひ。
ま〜ヒトは見たいものを見るという傾向があることは心理学で指摘されていることですからな〜

p.55
重要なのは意志動因(Wilenstrieb)の圧倒的関与・感情の影響・感情の随伴を認識することである。これらは心証形成を可能にするもの、いな強制するものである。明証や心証を理性的思考固有の規準としてでなく、明らかに重要な意味を持つ無矛盾性とその調和という―圧倒的に感情により規定を受ける―精神上の快楽体験として把握することもまた重要である。

「精神上の快楽体験」というのがいまいちよく分からないのですが、「これで決まり!」「結論デター」みたいなある種のすっきり感のようなものはあるかもしれないですね。

*1:心理屋だったら、あ〜この「心理学」って何か違うわ〜多分ヴントとかジェームズとかそのあたりの古いやつだわ〜ともかく私が知ってるのとは違うわ〜とか思うのでしょうが、心理屋以外の人だと文字通り「(現在の)心理学」と読んでしまうかもしれないので。このことは訳者解説にきちんと書いてくださっていますが。