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サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件/解任(オリンパス不正経理事件関連2冊。)

サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件

サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件

オリンパス不正経理発覚のきっかけとなった雑誌FACTAの記事を書いたジャーナリストによる本で、掲載記事も読めます。本書を読むと内部通報制度の機能不全を実感します。
オリンパス不正経理「内部通報制度の機能不全を見て記者に告発」
あわせて、不正経理に関与し続けた経営陣からCEOを「解任」されたウッドフォード氏による手記も読みました。
解任

解任

オリンパス系列の医療機器会社のセールスマンから身を起こした、勤勉かつ正義感のあるお人柄がとてもよく表れた、緊迫感ある読み物でした。
2冊の本で共通して疑問を呈されていることがあります。日本人(日本社会)のある種の二重性です。
1冊目の書名の由来になった、ウッドフォード氏がジャーナリスト山口氏に語った言葉です:

p202-203
ウッドフォードが少しだけ感情を込めて私に尋ねたことがある。
「日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも極端に分かれてしまうのか」
身の危険も顧みずに不正を追及しようとするサムライもいれば、遵法精神に欠け不正を働いたり、何の疑問も持たずにこれを幇助したりするイディオットもいる。あるいは不正を働いた企業側に回って正論に耳を塞いでしまう金融機関もイディオットに分類されるかもしれない。
私はついにウッドフォードの問いに答えられなかった。両極端に分かれてしまう理由を並べ立てようと思えばいくらでも並べられるだろう。しかしどんな答えを並べても、ウッドフォードを納得させられるとは思えなかったからだ。

これと同様なことが別な言い方で、ウッドフォード氏の手記には何度か出てきます。

p215
オリンパスに成長の大きなポテンシャルがあるように、日本にもさらなる成長と改革の可能性があります。高い教育水準、細かな心遣い、モラルの高さ、真面目さ、その秩序。それは日本の大きな強みです。他の国すべてが持てるものでは決してありません。

p215
そして、一人のセールスマンとしては、日本企業の飛び抜けた商品開発力に魅力を感じずにはいられません。日本の技術者はじつにすばらしい製品を生み出しています。日本の方々は誇りに思うべきです。しかし技術は一流ながら、企業間のもたれあいやジャーナリズムの未熟さのせいで、低級なガバナンスや二流の経営がはびこり、世界で戦うための力が失われているのです。そこさえ改善でき、日本の企業が復活を遂げれば、この国はふたたび活力を取り戻すはずです。高齢化や人口減少、GDPの200%以上の債務を抱えた日本の現状を考えれば、日本にとっては企業の復活こそが最重要課題なのではないでしょうか。

個別には結構イケてるのに、組織としてはダメダメなんだよなあ?何で?ということです。
組織としてダメというよりは、今までのやり方が制度疲労を起こしているともいえますが。
確かに深い謎であると思います。