lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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工学部ヒラノ教授(工学部の「ヒラ」が文学部の「タダ」に対して向こうを張る。)

工学部ヒラノ教授

工学部ヒラノ教授

またまた今野浩先生のご本です。
以前はかつての部下大学の同級生について書いておられましたが、今度はご自分の「工学部平の教授」としての”自伝”をお書きになられています。
本書を皮切りに「ヒラノ教授」シリーズは続々と出されているみたいですね。読まねば。
ちなみに、書名から推測されるように、筒井康隆文学部唯野教授』の向こうを張って書かれたらしい*1けれども、本書は”大学教授と大学の実態の面白おかしい暴露話”ではありません。
確かに、「工学部ヒラノ教授」についてのトホホな描写は頻出しますし、在籍した(している)大学についてここまで書いていいの的な内容はありますが、”工学部(エンジニア)愛”がベースにあるところが、「唯野教授」とは全く違うところです。

(p.193)
文学部唯野教授・経済学部金満教授の競争相手は、日本人だけである。一方、工学部教授の競争相手は、世界である。

日本の工学部教授は”ヒラ”でさえも英語で研究を発表し、世界のピアと競争する優秀で勤勉なエンジニアであるぞという主張がまぶしいです*2

*1:「(p.7)その後、大学暴露・告発本が次々と出版された。研究はもとより、教育もろくろくやらない無能教授と、はじめから勉強する気がない学生が溢れる新設文系大学の姿に、私こと『工学部ヒラノ教授』はただ呆れるばかりだった。”どこまでが本当の話なのかはともかく、これではレジャーランドと呼ばれても仕方がない”。こう思いはしたものの、この時ヒラノ教授は、教育・研究に本気で取り組んでいる工学部教授とは、まったく関係がない話だと考えていた。」「(p.8)ところがこれらの本から発射された放射線は、私立大学文学部だけでなく、理工系大学にも大きなダメージを与えた。」「(p.8)ヒラノ教授は、かねてこの放射線を除去するため、雑務で消耗しながらも、研究と教育に情熱を燃やす『工学部平(ふりがな:ヒラ)教授』の物語を書きたいと考えていた。」

*2:ただし今野先生は筑波から東工大、その後中央大と、”一流”といえるところにおられた方なので、日本の工学部すべてがこうとは限らないと思います。しかし少なくとも勤勉実直であることは共通しているかもしれない。