lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記(ブログが本になったと思えば星5つ。)

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)

何のきっかけで本書を自分の「読みたい本リスト」に入れていたのか忘れてしまいましたが、読んでみました。
2004年夏から2年間、超名門ハーバードビジネススクール(HBS)への留学体験をつづったブログを書籍化したものです。
したがって、本としての構成はどちらかというまとまりがなく散漫な印象を受けますが*1、ブログを読んでいると思えば非常に興味深く面白い本です。
以下、自分が本書で気になったところに該当する著者のブログ記事リンク。
What's a Business For? - 2005/2/15
通信制の大学の科目で経営学入門で、企業が利益を追求するのは自らの長期的な存続・繁栄のためであり、そもそも自らを存続・繁栄させることにより社会に有益なものを提供するためだという趣旨のことを教わったことから、企業は何のために社会で存在するのか、というあたりのことが気になっていたので、非常にフックする箇所でした。

多くの株主は「企業と命運を共にするオーナー」という従来の株主像からは離れ、「おカネ」という、現代においてはもっともありふれた(commoditized)資本を拠出して、一時的な株価の上ぶれを狙って企業に出たり入ったりするゲームの参加者に過ぎなくなっているのだ。
また、現代社会において一番のリスクを背負っているのは企業の一般従業員ではないか、FTの記事はそう指摘している。曰く、企業の業績変動に応じて移り変わることができる株主とは異なり、モビリティーがないほとんどの労働者は、一生をその企業とともに過ごさなければならず、リスク回避をする手立てがないのだ(さらには、ストックオプション企業年金などを通じて、二重・三重ものリスクにさらされていることになる)。
以上を考慮すると、保有期間やさらされているリスクを考慮したとき、株主の利益保護を絶対的に優先させるという考えは、他の利害関係者とのバランスで修正されるべきではないか。法律論としてはロジックが弱いかもしれないし、実際に制度論としてどのように実現させるかという点で難しさを残すが(裁判所にその判断を委ねるのが適切だとも思わない。これじゃぜんぜん駄目?)、このような視点は、株主資本主義が声高く叫ばれる今日における政策論を考える上では、特に重要であると思う

以上は、元記事が見つからなくなっていたので、他ブログの記事から引用箇所を転載しています。
太字はlionusがつけましたが、シューカツ学生が安定志向大企業志向なのは、そうやすやすと身動きできない企業の一般従業員になることのリスクが大きいことを無意識的にも感じているのかもしれません。ドキッとしました*2

*1:前述の『アメリカン・ロイヤーの誕生』読了すぐにこちらを読んだので、人に読ませる姿勢とか構成とかという点で非常なギャップを感じたせいもあるかも。

*2:”就社”することが非常なリスクであることを感じていながら、中でも他よりは安全そうなところに入り込むことに奔走するのは大きな矛盾をはらんだ分裂人格的な行為ではありますが。