lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

津波災害――減災社会を築く(まるで予言のごとく。)

津波災害――減災社会を築く (岩波新書)

津波災害――減災社会を築く (岩波新書)

京大防災研の元所長で防災研究の大家である著者による、津波災害の一般向け解説&警告の書です。
東日本大震災の3か月前に出版されているというのが何となく不気味です。
当然、その震災で大きな被害を受けた東北太平洋沿岸部についても「日本の津波常襲地帯」としてふれられていました。
本書で新しく知ったことの一つに、瀬戸内海の津波災害の可能性があります。近い将来発生するといわれている東海・東南海・南海地震による津波について、瀬戸内海も被害を受ける可能性については想像していませんでした。しかし本書では、「将来、南海地震(M8.4)が起こったときに瀬戸内海に進入してくる津波によって養殖いかだが被災する海域の分布図」が示されています。
日本は自然災害の頻発する地域であり、災害が起こるのは防げないとしてもそれによる被害を最小限にとどめ、また、被害からの復興をいかに早くうまく行うかが重要です。
東日本大震災から1年経ちましたが、今後どれだけの時間が地域の立ち直りに必要なのか見当もつきません。
1993年発生の北海道南西沖地震津波で大きな被害を受けた奥尻島の事例は、復興がいかにあるべきかの教訓として挙げられています。

被災後、185億円に達する義援金は、全壊家屋一戸当たり1000万円を超える配分になり、破損した漁船まで義援金の支給対象となった。

津波被災したのがたまたま「島」という限局された地域であったためですが、東日本大震災の場合は被災地域が広範囲なためこういうことは当てはまりません。

しかし、20年近く経過した現在、奥尻島の被災地は人口減少が続くまちになってしまった。(中略)区画整理された美しいまちが出現したが、肝心の住民が少なくなっている。観光資源の豊かな土地であり、飛行場もある有利さを生かしたまちづくりをすべきであったが、逆に居住禁止区域を設定するなど、この災害を将来に生かすことができなかった。

上記のように比較的”手厚く”援助された(と思われる)奥尻島でこうなのか、と愕然としました。
援助の”量”はあったけれど、その方向性が残念であったということなのでしょう。

近い将来、東海・東南海・南海地震津波が発生し、被災することがわかっていても、被災後のまちづくりを考えている自治体は皆無である。被災後、まちづくりを計画しても時間が足らず、結局もとのまちに戻ってしまうことになる。事前に被災後のまちづくりの青写真を作っておくことの大切さを理解するべきであろう。

被災してから防災集落をつくっても、肝心の住む人が減少したのでは災害に負けたのと同じである。