lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

やっと地に足が着いた頃かもしれないが・・・。

シリーズ東日本大震災 助かった命が なぜ
日曜日の晩,録画していたのを今日の晩見ました。
全体的には,阪神淡路大震災以後,震災→PTSD(だからこころのケア)というイメージが広く一般化する段階から,中越地震等の経験を経て,別な段階に入ったような印象を受けました。
震災ストレスによりいわゆるPTSDを発症するケースは確かにあるのですが,震災のような自然災害では大体2割程度と,今までの経験から言えるようになってきています。つまり,被災した人が全てPTSDを発症するわけではないということです。
阪神淡路の直後は,災害の心的影響すなわちPTSD,かのような,PTSD概念の輸入後間もない頃であったせいか,少々過大な(もしくはその頻度に比べバランスをやや欠いた)扱いであったような気がします。今振り返ると。
しかし,阪神淡路の後の心理・精神科関係者による研究と実践の積み重ねにより,災害すなわちPTSD発症ではなく,物的・心的喪失によるダメージの存在をきちんと評価することと,そこからの回復過程をいかに支援するかということに焦点が移りつつある(あるいは移った)ように思いました。
言い換えれば,災害=トラウマティック体験によるPTSDという精神疾患を発症する人は一定数いるし,当然それらの人たちに対する手当ては必要。でも,その他にもかなりのボリュームで精神科的には正常範囲に入るが,喪失体験による心的ダメージを受け,災害前よりも精神の健康度を落としている人たちがいること。そしてそれらの人たちを何の支援もないまま放っておくことは,さらなる精神疾患,例えばうつ病やアルコール依存などの発症リスクを高めることが認識され,何とかしないといけないよねということが共有されつつあるんだろうなということです。
個人的には,このような「流れ」になってきていることは納得だし,望ましいことだと思っています。
あと,元(?)心理屋として気になることがひとつ。
このNスペに「こころのケア」を担っている専門職として出演された方には,東松島市保健師さんと,新潟こころのケアセンター精神保健福祉士さんがおられました。
どうも「臨床心理士」は出てこなかったような気がするのです。
もしかすると後者の方は臨床心理士も持ってらっしゃる方かもしれませんが,ちょこっとお名前で検索した印象では,精神保健福祉士と称しておられるようです。
でも,何か分かるような気がするな。
地域の人を定期的に訪問したりの丁寧なフォローは保健師さんならではの動きだし,精神保健福祉士は,心理(精神科)+福祉のハイブリッドなので,「こころ」だけでなく「生活」にもダメージを受けている被災者に福祉面のアプローチを試みる余地があるのは強みではないか,と勝手に推察。まー福祉面のリソースについては精神保健福祉士がくまなく把握しているとは限らないと思うのですが,「こころのケア」に特化した(しているはずの)CPよりはこの点はずっと強いだろうと感じた次第です。