lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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フロイト―無意識の世界への探検 (オックスフォード 科学の肖像)(彼も「科学者」のひとりに。)

フロイト―無意識の世界への探検 (オックスフォード 科学の肖像)

フロイト―無意識の世界への探検 (オックスフォード 科学の肖像)

同じ伝記シリーズの『パブロフ』を読んだ後,同じ配架エリアを探してもなく,もしかしたらと臨床心理のエリアを探したら見つけました。
長くなりますが「エピローグ」から以下複数箇所を引用してみます。

フロイトの仕事は完璧ではなかった。フロイトは,疑いを投げかける者を容認しなかったし,とりわけ才能ある弟子の一部を,自分の考えに敬意を示したりしないという理由で自分の運動から放り出した。フロイトが研究した主題も,結論にいたった方法も今日なお論争の的となっている。

これこそが逆説なのだ。フロイトは強烈な忠誠心も激しい憎しみも呼び覚ますのである。人間の行動と根底にある心的葛藤との関係についてフロイトがおこなった細かい分析によって,人類学,歴史,文芸理論など何十もの分野が,人生と芸術を分析するための有益な道具を与えられた。とくにフロイトは言語に細かく注意を払い,夢とフロイト的失言の理論によって,文学の研究者は書かれた言葉を理解する新しい貴重なやり方を与えられた。

科学に対してフロイトがした最大の貢献は,ヒステリーや神経症的行動の治療ではなかった。フロイトは世のなかに,心を探る新たなやり方をもたらした。フロイトは現代的な意味での科学者ではなかった。しかし,多くの研究者,心理療法家,芸術家,文筆家が,行動の裏にある無意識の動機,私たちが認めようとしない感情,理性的な思考という外見の下にある,闇に包まれた土台を探ることを可能にしたのだ。