lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち(20歳前後からすでに進行が始まっている?)

100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち

100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち

Twitter経由で見つけて,図書館にあったので読んでみました。
結婚も出産もせず,修道院の中で等しく規則正しい生活を送ってきた=生活習慣の均質度が高い,高齢の修道女を対象とした老化研究,特にアルツハイマー病の縦断研究についての科学エッセーです。
研究当事者による記述は,研究のお話としても大変興味深いのですが,何よりも,研究協力者となってくれたシスターたちへの尊敬と愛情に満ちた姿勢が印象的でした。
この本に興味を持ったのはそもそも,「高い学歴はアルツハイマー病のリスクを下げる」とこの研究によって示された,というところでしたが,実際に読んでみてさらに驚きだったのは,
(本格的に修道女になる前の)20歳前後で書かれた自伝の意味内容が豊か(複雑?)であるほど,高齢になっても認知機能が維持されている傾向があり,その反対に,自伝の意味内容が単純であると,その後アルツハイマー病を発症している率が高いことが認められた
ということでした。
また,アルツハイマー病に関係すると思われる脳の病理的変化は,かなり若い頃,20歳くらいから徐々に進行しているらしいのです。
その脳の病理的変化に抵抗力があるか否か*1,というのが,20歳前後の認知能力,ここでは当時書かれた自伝の文章の分析から後ろ向きに関係づけられるというのです。
さらに,20歳前後での文章を豊かに綴る能力は,何により差がつくのか・・・これはエビデンスとはされていませんが,幼いころの親による「本の読み聞かせ」ではないか,ともいわれていました。
「本の読み聞かせ」だけでなく,それを可能にしていた環境=親の知的レベル,時間的・精神的余裕(社会経済的地位も関係?)も20歳前後での文章力に影響しているのではないかとは思いますが,いずれにしても「本の読み聞かせ」は「指標」として非常に優れているように感じました。

*1:抵抗力があれば,それだけ高齢になってアルツハイマー病を発症する可能性が下がる。