lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

伝承されてきた災害文化。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110316/dst11031613200050-n1.htm

津波のときは井戸を見ろ」 先人の教えで津波避け助かる
 
 「津波の時は井戸に気をつけろ」。岩手県大槌町栄町の佐藤綾子さん(59)は二十数年前に近所の高齢者から聞いたこんな教えを覚えていて、津波から逃げ延びた。「昔聞いた話が本当に役に立つとは」と先人の知恵に驚いた様子だった。(清作左)
 佐藤さんは二十数年前、当時小学生だった長女(32)と、学校の学習発表会のために津波について勉強していた。
 そのとき、明治29年に起きた明治三陸津波に被災した近所のお年寄りから体験談を聞いた。「津波の時は井戸の水が引いて、ゴボゴボという音がする。井戸には気をつけて」と佐藤さんは振り返る。それ以降、「津波が来そうな時はとにかく井戸を見る」と肝に銘じていたという。
 この知恵が今回の震災で生きた。揺れが収まった後、佐藤さんはすぐに自宅の井戸をのぞいた。「(井戸の水が)今まで見たことないぐらいに真っ茶色に濁っていた。これはまずいと思って、すぐさま逃げた」
 自宅は津波に飲み込まれたが、佐藤さんは高台に逃げて助かった。
 高台から見ると、町に煙がたなびいていた。「よく見ると水しぶきだった。あんなに近くまで来るなんて…」と今回の津波の壮絶さを語った。
 「先人の教えは大事なんだと、今回のことで教わりました」と笑顔を見せた。

「災害文化」により命が助かった例だといえます。
災害文化とは:

災害についての知識や伝承、あるいはそれに対応する方法や技術的産物の文化のこと

http://www.weblio.jp/content/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%96%87%E5%8C%96

現在では,気象庁津波警報を出しますが,昔は津波警報など出されず,津波が迫っていることを事前に知ることはできませんでした。しかし,津波被害に繰り返しあってきた地域には,津波の前兆となるものについての知識が自然に蓄積され,言い伝えられて,それぞれの「災害文化」が形成されているといわれています。
この例では,過去の教訓により命だけでも助かりましたが,津波被災地の映像の中に,チリ地震による津波が届いた地点を示す道路上の表示や,津波の水が達した高さを示す表示が瓦礫の中に埋もれて見えるシーンがありました。それらが表示していた,チリ地震津波到達点以降も,遠くまで瓦礫は続いていました。
今回の震災による津波は,災害文化でカバーできる範囲をはるかに超えていたのだと感じました。
ただ,大昔と違うのは,人間が高度に文明を発達させただけ,自然災害によりもたらされる被害が拡大している・・・最も顕著な例が,福島第一原発ではないかと思いました。
災害文化で対処可能なレベルを超えた大津波と,文明の高度化による被害の巨大化と複雑化を織り込んだ,新しい災害文化をつくっていかなければならないのだと思います。