lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート(フィギュアスケートは文脈が大事。)

氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート

氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート

図書館を歩いていて,背表紙がパッと目に入ったので,手にとってしまいました。
著者の田村明子さんのお名前は,フィギュアスケートの記事関係でよく見る気がしたので読む気になったのですが,確かに,長い間フィギュアスケートを取材されてきただけあり,読み応えのある内容でした。
銀盤上で繰り広げられる華麗な戦いは「光」ですが,同じ国のライバルを知り合いに頼んで殴打させたケリガン事件,ソルトレイク五輪時の不正審判事件など,フィギュアスケートはスキャンダルで盛り上がる傾向があるように思います。これが「影」の一側面ですね。
子どもの頃から何となくは見ていましたが,ファンといえるほどではなかったので,フィギュアスケートの世界の(歴史的・文化的)「文脈」を知ると知らないとでは,随分見方が違ってくることに気が付きました。
現在まさに問題になっていることには,昔々からの流れに端を発しているものが多々あるようだと,3年前に出版された本なのに,心当たりがありまくることに驚きながら一気に読んでしまいました。
さて,浅田真央ちゃんについては,本書でも特別な記述がされています。

浅田のプログラムを振付したローリー・ニコルは、こう形容した。
「マオは特別な子。彼女のような選手には、今まで出会ったことがありません」
ミシェル・クワンを子供のときから見てきたニコルに、今まで出会ったことがない才能と言わせるのは、普通のことではない。それは浅田が並外れたジャンプの才能を持つだけではなく、スケーターとしての天性があるからだ。

質の高い滑りとジャンプの両方を兼ね備えた浅田真央は、国境を越えたすべてのフィギュアスケート関係者にとって、ようやく出現した理想の選手なのである。彼女なら、ジャネット・リンを超えられるのではないか、という人々すらいる。

そして,その真央ちゃんのライバルとしては当然,

誰もが思っているように韓国の金ヨナだろう。荒川静香は金のことを、「1度の蹴りが伸びて、スケーティングの質がすごく高い」と絶賛する。3回転+3回転もこなし、体も柔らかく、苦手なものは何もない。

そう,本書が書かれた頃は私も素人ながら彼女はすごいと思っていました。

世界の関係者たちが待ちこがれているのは、この2人の目から子供らしいあどけなさが消えて強い意志の光が宿る日である。おそらくヤグディンプルシェンコ以来の、質の高い白熱戦が繰り広げられることになるだろう。

確かに,白熱した戦いは繰り広げられましたが,これはヤグとプルのケースとは一緒にできないような気がします。
無理矢理人工的に対立図式を作り出しているような・・・本人の力と力の対決がなる前に,促成栽培をしてしまったような・・・でも北米でのスケート人気が一時ほどではない現在,東アジアのお客さんを呼び込む必要があるのでしょうね・・・目の先を焦って自分の首を絞めるようなことにならねばよいのですが。
それよりも何よりも,真央ちゃんの身体が心配です。
次は誰にも文句を言わせない演技をしようと,さらに努力を重ねて練習してきたようですし(そして結果を出している),これからもそうするでしょう。
でも,生身の人間ですから疲労も物理的限界もあります。
無理をされないように,このオフシーズンは全力で休んで欲しいと思っています。