lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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失敗学のすすめ(まずはこれ。)

失敗学のすすめ

失敗学のすすめ

畑村先生の本を集中的に読んでいる時期がちょっとありましたが,畑村先生独特の思想体系みたいなものは,本書に大体表現されているような気がします。
他のご本が本書の「焼き直し」とまではいえませんが,手を替え品を替え色々出されているけれども,でも基本はここにあるという感じですね。
東大工学部生にいきなりものづくりをさせて,わざと失敗体験をさせるとか,研究室で起こった事故体験を例示して,失敗の「仮想体験」をさせる話は読み物としても面白いです。
なぜわざと失敗させるのか,失敗の仮想体験をさせるのか。

学校の授業で教える知識は、すでに改良が加えられて、課題から結論までが無駄なく一直線の状態にあるものがほとんどです。一方、実際の創造の作業は、最終的に導き出された模範解答もさることながら、研ぎ澄まされた完成形になる前の段階の、こうした思考平面に投影されたばらばらのアイディアの種が脈絡づけられて解へといたったプロセスが大切であることもこの機会にぜひ覚えておいてください。
最近、脳科学者として著名な理化学研究所の松本元先生とお話をする機会がありました。その際、松本先生にこの思考平面図による創造プロセスの話をしたところ、
「畑村さん、この考え方はまさしく脳の創造プロセスに合致していますよ」
といわれました。

思わぬところで松本元先生のお名前が出て来たのでテンションが上がってしまいました(余談)。
・・・
ただしかしですね,畑村先生は東大工学部生という,ある種極端に偏ったサンプルを基に論ぜられていることを留意する必要があるかも。
東大工学部生は,世間的にみてかなり”優秀”な群であることはまず異論はないと思います。
”優秀”であれば,失敗からよく考えて自分の身にしたり,他人の失敗談を自分に置き換えて考えられるだけの想像力があるかもしれません。
でも,失敗してもそもそも何が悪かったのか理解できなくて,ただネガティブ感情だけが残ってしまったり,他人の失敗談を聞いても「かわいそうだね〜」「大変だね〜」という一時的な感情的反応をするにとどまり,あくまでも他人事として記憶の彼方に放り投げてしまう場合もあるかもしれません。