lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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回復力~失敗からの復活(工学の先生に説かれるとは思いもしなかった。)

「失敗学・畑村洋太郎」フェア(←自分的に実施)の一環として読みました。

回復力~失敗からの復活 (講談社現代新書)

回復力~失敗からの復活 (講談社現代新書)

失敗からの「回復」について,どちらかというと個人の立場からの心構えを説いた本です。
もちろん,著者の「失敗学」の経験に基づいています。
工学系の先生のはずですが,人生訓を読んでいるような気がしました。
長くなりますが,以下のくだりは,まるでカウンセリングがなぜ”効く”かの平易な説明だったりします。傾聴を説かれるとは思いませんでした。読みながら,少々びっくり。

手助けをしてくれる人から何らかの示唆を得る必要はありません。たとえば、相手は自分の話に対して「まったくその通りだ」と同意してくれたり、静かに相づちを打ってくれるだけで十分です。それは本当に辛いときには、人はその思いを誰かに伝えるだけで心が楽になるからです。
これはおそらく、話を聞いてくれた相手との間で、最も辛い部分を共有できるからだと思います。誰かに悩みを打ち明けることには辛さを移す効果があるのです。それは科学的に解明されているものではないと思いますが、少なくとも私は自分自身の体験を通じてそのように確信しています。
私は前述したように、守秘義務の約束を交わしたうえでいろんな人たちから失敗に関する相談を受けています。そのようなことを繰り返しているうちに、とくにこちらからアドバイスすることもないのに、ただ話を聞いてあげるだけで相手が不思議と元気になることがわかりました。
一方で、ただ話を聞いているだけの私のほうは、相談を受けた後はいつもひどく疲れてしまいます。だから真剣に相手の話を聞くことで、相手と自分の間で話の中の最も辛い部分が共有されているのではないかと考えるようになったのです。
話すだけで本当に相手に辛い部分が移るかどうかは正確にはわかりません。しかし、「自分も同じような体験をした」という話はよく聞くので、実行してみる価値はあります。これはカウンセラーや占い師なども同じで、話を聞くことで相手の辛さを引き受けている面があると思われます。いずれにしても、せっぱ詰まった状況に追い込まれたときには、そこから早く脱却するためのきっかけづくりのつもりで、一度試してみるといいでしょう。
仮に話すだけで本当に相手に辛さが移るのだとすると、聞き手は相当にタフであることが求められます。それに加えて、相手の言うことの細やかな部分までわかり、それでいて自分の主張をするでもなく、まさしく鈍感になって話を聞き続けてくれるという人が理想です。