金融vs.国家(文学部出身者としては是非背景を知りたい。)
- 作者: 倉都康行
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/06
- メディア: 新書
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金融の発展は,ほぼ欧米の独壇場であり,日本は後発でかつ,欧米(特にアングロサクソン=米英)追従に過ぎず,カネは持っているがそのプレゼンスは残念ながら,そのおカネの量には到底見合わない小ささであると読めました。
別な言い方をすれば,著者は,現在(および未来)を理解するためには,まず背景となる歴史=欧米を中心とする金融史を知るべきであると主張していると理解しました。
改めて世界史を勉強しておく必要性を痛感しました。
lionusは一応,高校で世界史を履修したことになっているのですが,当時の担当の先生が今振り返ってもふざけた人で,なんと,いわゆる世界四大文明を説明し切らないところで,学期が終わってしまったのです。確か甲骨文字がどうたらこうたら,とかいうところで終わってしまったのです。週2コマ×1年間かけてそこまでしか進まないなんて,一体どういう料簡だったのか,心から不思議でたまりません(怒)。
・・・
まあ,それは置いておいて。
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著者の倉都氏は世界史を学ぶことの重要性を説いておられます。
金融や経済において歴史を学ぶことの意味は大きい。だが最近の高等教育*1においては,世界史と日本史の双方を学習するケースが希少になっているという。
(中略)
だが,金融のように大西洋史が重要なポイントになる場合は,日本と世界を並列においた歴史観が必要になる。
政治思想や文化が歴史の集積であるように,金融もまた歴史を背負っている。金融史観が金融力の水準に影響していることは否定できない。教育施設や制度が整備されているはずの金融機関でも,金融の歴史をあまり教えないのは不思議である。
なるほどなあ,現在は過去の積み重ねの上に成り立っているからなあと思ったのですが,「あとがき」を読み,また別の感想を持ちました。
以前ロンドンで働いていたときに,ある英国系金融の幹部から,日本の銀行は経済学部卒ばかり採用しているのですね,と皮肉られたことがある。現在はわからないが,たしかに当時の彼らは物理や文学,哲学,美術史などを専攻していた学生を採用することも多かった。金融を経済として見ることに何の疑問も感じなかった筆者には違和感もあったのだが,異様であったのはむしろ我々だったのかもしれない。
はい。lionusもどこかで,英国の何かの企業が,同様に,日本人的にはビジネスに関係が薄いように思う歴史や文学などを専攻した人間を選んで採用することを知り,かなり意外に感じた記憶があります。その企業が何だったかは忘れてしまったのですが。
筆者は歴史は大切だよね,と書いておられますが,歴史以外の物理や文学を専攻した学生を英国系金融がなぜ採用するのかの理由については考えを述べておられません。
lionusは是非その背景を知りたいと思います。
なぜなら,英国はかつてに比べれば「没落」したかもしれませんが,世界全体で考えると「先進国」でずっとあり続けています。そういった国のしていることは,大いに参考になるはずです。
また,そもそも,おカネそのものにダイレクトに関係のある経済学部や商学部,経営学部等ではなく,むしろおカネを稼ぐことには直結しない文学部的な専攻がなぜ重視されるかの理由が知りたいです。
そこに案外,アングロサクソン=英米の金融世界における強みの源泉があるような気がするからです。