lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

ニアミスしていたかもしれませんね。

先日,SPSSを使ったデータ処理についてちょっと相談を受けてきました。
幸い,ご本人のお役に立つことができた模様でよかったです。お陰様でその後,学内のレストランでケーキセットをおごってもらいながら,日頃拝聴する機会のなかったご研究の内容(基本的には社会学)を拝聴することもでき,lionus的には有意義な時間を過ごすことができました。
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近年のSPSSは,GUI(コマンドを書かなくても,メニューから選択すればOKという意味)によるデータ処理(統計処理)が出来るということが売りのように理解しています。
その点で統計パッケージとして古くから互いに覇を競っているSASに比べ,最近はアドバンテージを獲得しているのではないか,というのが文系エンドユーザのlionusの印象です。*1
事実,lionusは卒論と修論ではSASを利用していたのですが,M修了後はSPSSを利用していたりします。理由は,いちいちコマンドを書かなくてもGUIで統計処理ができてしまうという手軽さからです。
しかし,基本GUIで作業ができるSPSSにおいても,ちょっと突っ込んだデータ処理(統計処理)をしたいと思うと,ひと昔前の「コマンドシンタックス」に頼らないといけない場面が出てきたりします。
多くの場合,SPSSではGUIオンリーでも大抵のデータ処理は可能なのですが,GUIでやろうとするととてつもなく煩雑になったりするケースがあり,ひと昔前のコマンドシンタックスで何もかも作業していた立場からすると,「靴の上から足を掻く」ことに似たイライラを感じ,だったらもう自分でコマンド書いちゃうぞ!という次第になるのです。
今回の相談もそういうお話でした。
相談を受けた先生は,特定のテーマについて10年毎に調査を行っておられるそうです。前回調査を実施し,データ処理をした際はコマンドシンタックスしか受け付けないSPSSを使ったのだが,最近のSPSSGUIになってしまい,コマンドシンタックスだった頃の前回自分がやった処理をどこからどうすればいいのか分からないので助言をして欲しいということだったのです。
まあ,最終的には,目下の懸案を解決することができて,お互いにhappyだったのですが,lionusの世代的な立ち位置を改めて考えるきっかけになりました。
SPSSをコマンドシンタックスから利用していた時代というのは,lionus母校においては,大型汎用機上で統計パッケージを利用していた時代と同一です。言い換えれば,統計パッケージを利用することは大変「高級」なことだったのですね。
lionusが卒論を作成した頃はその時代にやや重なります。
しかし数年後,パーソナルコンピュータの能力の飛躍的な発展により,SPSSのような本格的な統計パッケージがPC上で動く時代になり,統計パッケージの存在がぐっと身近になりました。*2
それに伴い,自分がしたいことをいちいちコマンドという”呪文”で記述する必要があったのが,GUIで一通りの処理が可能になりました。
データ処理(統計処理)という行為は,それによりぐっと身近(容易)になりました。
それはとても素晴らしいことだと,心より思います。
ただし,ちょっと突っ込んだ何かをしようとすると,途端に途方に暮れてしまうケースも出てきます。
研究においては,データを当初考えていた処理からちょっと突っ込んで加工してはじめて得られる知見もあったりします。
その”突っ込んだ処理”は,現在のSPSSではなかなか難しかったりすることがあります。
そこで,活きてくるのが,昔昔のコマンドシンタックスの時代を知っているlionusのような人間なのだと実感した次第です。

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そのご相談を受けた先生からは後日お礼のメールをいただいたのですが,以前SPSSを大型汎用機上で利用しておられた時代が,ちょうどlionusが学部生として汎用機が設置されていたセンターに出入りしていた頃と重なっていることが分かりました。
ひょっとしたら,論文を執筆するために端末とにらめっこしていた先生と,当時学部生だったlionusとが,ニアミスしていたのかもしれないと思うと,縁は奇なものだと改めて思う次第です。

*1:大学等でのシェアがどうなっているかは調べてませんので,あくまでも個人的印象。

*2:もちろん,SPSSそのものは結構高価ですので,大学LAN内のPC上に限られたお話ではありますが。