lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

口の模型が喋る不思議。

甲南大の公開講座「人の知能と機械の知能」,第2回目(5/24)の記事を後から書いてみます。
「私たちの話すしくみと聴くしくみ」(北村達也先生)でした。
北村先生のページで少々予習していったのですが,研究に関するものの実物を見せてもらったのはよかったですね。
タイトル通りの講義内容で,広く浅くでしたが,さらに調べて(勉強してみたくなる)「不思議」が散りばめられていた感があり,公開講座としては適切な内容であったと思います。

  • 人間が喋る仕組み(のど,口を通って音が出る仕組み)を研究して,機械に喋る音色を出させたい。
  • 子どもは大人と体のサイズ(音色)が違うのに,子は親のマネをして言葉を覚えていく(不思議である)。
  • 音声と文字の違い→音声は文字で表せない情報(意図や感情,話者がどんな属性(性別等)を持つか)を表現できる。これって,文字主体のメールコミュニケーションと電話音声との違いに通じるね。
  • 口の由来:両性類が陸に上がったときに,エラが不要になった→エラが口のもとになった。解剖学的には,咀嚼筋・咽頭筋はエラがもとなので,遅い筋肉,一方,舌は体性で,速い筋肉なのだそう。
  • 音声は(当然のことながら)音波である。しかし,あまりに規則的周期だと人工的になる。人間の声らしく聞こえるためには,ある程度のゆらぎが必要。
  • 舌を作るのは大変難しい。骨など硬いものの支えがなく筋肉のみの構造にも関わらず,微妙に器用に動く。似たようなものはゾウの鼻。
  • 犬とか四本足の動物は,舌の方向と,のど・口の方向が並行。しかし,人間は直立二足歩行するので,のど・口と舌の方向が平行ではない→ゆえに色々な動きの形を取れるようになった(これが喋れるようになるもとのひとつ?)。
  • 声道*1=のど,口,鼻のひとつづきの構造,MRIで被験者の発声時の画像を細かく撮り,そこからパラパラ漫画的に発語のアニメーションを作ったり,声道そのものの模型を作り,そこに機械を取り付けて,その模型に「発声させる(デモでは歌わせていた)」。
  • 机の上にのど−口−鼻の一続きの構造が鎮座ましているのは,なんとも不気味なような滑稽なような。それが鼻歌を歌うのだから,ますますくすぐったい気分になりました。
  • リアルな声道模型の前にも,レントゲン(画像)を用いた発話観測から,音響現象の数学的解析をされた研究者がおられたとか。人間の声道は曲がっているのを,真っ直ぐに伸ばした筒型に単純化したのがミソなのだそう。この研究者の著書は日本よりもむしろ海外で有名なのだそうです。

『母音 その性質と構造』

  • 講義終了後,机の上に”おすすめ”の本が紹介されていました。上記の本の他はこれらだったと思います。

音のなんでも小事典―脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで (ブルーバックス)
聴覚・ことば (キーワード心理学シリーズ2巻)

*1:きたむさんのコメントをいただき訂正。