パンダの死体はよみがえる(遺体おたく。)
- 作者: 遠藤秀紀
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/02/08
- メディア: 新書
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専門は解剖学ということになりますが,文章がやたらと「文学的」なのは意外でした。
解剖学についての入門的知識が得られる新書というより,動物の「遺体」に秘められた「ミステリー」を解き明かすことに渾身で取り組んでいる「遺体おたく」(←失礼)のお話として読めました。
好きな人とどうでもいい人との差が大きく分かれそうな内容かなと思いました。
まあ,題名に「パンダ」とあるので,「人寄せパンダ」よろしくぱっと目を引く本ではあります。
lionusとしてはかなり面白かったです。
パンダ以外の動物についても多数扱われていますが,「忠犬ハチ公」について
話は,まさに日本が軍事国家として国粋主義を発揚させていこうという時期に当たる。そんなときにたまたま渋谷駅前で暮らしていたハチ公の行状が,当時の行政・政治主導の道徳教育のなかでシンボリックに一人歩きを始めたというのが現実なのだ。
飼い主の死が理解できずに,習慣的に渋谷駅に通っていたところ,その様子をあわれに思う(あるいは単に犬好きな)人々が食べ物を与えたことから,渋谷駅前に居着くようになったというのが真実ではなかったかという考えのようです。lionusもそれには同感です。
ハチ公はあくまでもただの犬ですから,食べ物がもらえればそれで幸せだったのかもしれませんが,渋谷駅前でうろうろするハチ公に「もう帰らない主人を待つ忠心」を投影するのは人間の勝手です。
動物,特に人間に身近な犬や猫には人間社会のあれこれが投影(反映)される好例だと思いました。