「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学/神経心理学入門(タイトルではなく著者で選びました。)
- 作者: 山鳥重
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/04/01
- メディア: 新書
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タイトルを見て興味をもち,手にとってみると,気軽さを履き違えたエッセーかと思うようなものがあり,がっかりすることもあります。
本書は,タイトルも非常に魅力的ですが,この著者がこういったタイトルで新書を書かれたのかという意味で非常に興味をひかれました。
著者は神経心理学(神経内科)分野の大家です。
昔昔,この著者のこの本を読んだことがあります。
- 作者: 山鳥重
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 1985/01/01
- メディア: 単行本
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まあこの本は医学の教科書であり,独りで読むような類のものではないのでしょうが。
しかし勉強にはなりました。*1
この本を苦心して読んだ印象が強かったので,恐る恐る開いてみると,ものすごく取っ付きやすかったです。
- ですます調で書かれていて,NHK教育の健康番組などに出てくるようなお医者様の先生を思わせるようなソフトな文章。
- たとえ話を巧みに用い,高次脳機能に関する基本的な事柄を分かりやすく順序だてて解説。しかしその分かりやすい解説は著者の深い学識(と脳科学分野の定番的知見)に裏付けられたものであることがうかがえる。
- タイトルに「脳科学」とついているが,最後には生き方論(人生論)になっている(スゴイ)。
各セクション毎に感銘を受ける文章があり,引用するときりがないのですが,ちょっとだけ。
人間は生物です。生物の特徴は生きることです。それも自分で生き抜くことです。知識も同じで,よくわかるためには自分でわかる必要があります。自分でわからないところを見つけ,自分でわかるようにならなければなりません。自発性という色がつかないと,わかっているように見えても,借り物にすぎません。実地の役には立たないことが多いのです。
誰も初めから知っているわけではありません。誰もが長い時間をかけて知識の網の目を作り上げているのです。(中略)
知識の網の目を作るにはそれだけの勉強が必要です。無から有は生じません。(中略)
網の目を作り上げる人と,作り上げない人がいる,というだけの差です。ただそれだけのことです。
後者は,最後の一文でかなり衝撃を受けました。
勉強は自分のためにするということがよく「わかり」ました。
*1:どれだけ身についたかは聞かないでください(汗