lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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阪神・淡路大震災10年―新しい市民社会のために/空白の天気図(応力集中。)

阪神・淡路大震災10年―新しい市民社会のために (岩波新書)

阪神・淡路大震災10年―新しい市民社会のために (岩波新書)

建築学に応力集中という用語がある。仮に四本の柱に支えられた建築物があるとする。そして,四本の柱のうち一本は虫食いで強度が低下していたとする。地震でこの建築物に振動が加えられると,四本の柱が負荷を均等に受け持つのではなく,あたかも屋根の雨水が樋に集まるように,弱い一本の柱に負荷が集中する恰好になる。その柱が他の柱より大きく振動したり曲がったりするためだ。結果的にその柱が折れ建築物は崩壊する。
地震による社会的な被害や人的被害にも,建築物における応力集中と同じような現象が起きる。人的被害についていうと,災害弱者に被害が集中するのだ。
(中略)
災害というものは,地域社会がかかえている弱点や災害弱者を冷酷なまでにねらい撃ちする形で襲うのだ。

言いたいことは,上記引用文中の最後の一文なのでしょうが,そのことを的確に表現するために,建築学から「応力集中」という言葉を借りてくるあたり,文章のうまさに感銘を受けました。
さすがノンフィクションの巨匠です。
この著者の本は好きで何冊か読んだことがありますが,中でも

空白の天気図 (新潮文庫 や 8-1)

空白の天気図 (新潮文庫 や 8-1)

は凄いです。広島地方気象台を舞台に,原爆とその1か月後に来襲した枕崎台風の観測を題材にした重厚なノンフィクション作品です。
広島市江波山気象館 台風も直撃、被害拡大YOMIURI ONLINE
被爆建物として紹介されている記事です。
広島市江波山気象館公式ホームページ
現在は「全国初の気象専門博物館」として使われているようです。でも2003年からは「広島市域の気象予報を開始」しているらしいので,気象観測そのものはまだやっているのでしょうか(例えばアメダスの観測地点のひとつになっているとか)。