lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

カウンセラーは学校を救えるか―「心理主義化する学校」の病理と変革(CP制度は飽和というかじきに崩壊すると思うんです。)

fprというML臨床心理士スクールカウンセラーとしての有効性について,財務省による調査結果をもとに議論されています。
私はスクールカウンセラーをしたことがないので,実体験はないのですが,教育と臨床(心理)は逆の方向性をもつと感じていたので*1,学校に臨床心理士が入っていくことについては,危うさがあるのではないかと漠然と思っていました。
fprでの一連の議論の中で,紹介されていた本があったので読んでみました。

カウンセラーは学校を救えるか―「心理主義化する学校」の病理と変革

カウンセラーは学校を救えるか―「心理主義化する学校」の病理と変革

臨床心理士がほとんど無批判に学校に入り込んでいくこと(社会・学校の「心理主義化」)の問題点,現在の「臨床心理士」という制度をめぐる諸問題について詳しく述べられ,教育学の立場から批判がなされています。
また,現在の学校における生徒と教師の関係について,「役割ゲーム」と「欲望ゲーム」という言葉を用い論じているところは,今まで漠然と感じていたが言語化できていなかったものが明確になったようで,「なるほど!」と思いました。
従来(すでに過去?)の学校では,生徒も教師もそれぞれの「役割」に期待される振る舞いをしていたため,学校の秩序が保たれていた。しかし最近は,学校や社会の「心理主義化」により,生徒は時に「ほんとうの自分」という言葉で表現されたりする,むきだしの自我・自らの内面の真実や欲望のまま振る舞い,教師に対峙する。これが生徒(欲望ゲームonly)と教師(役割ゲームと欲望ゲームの狭間に立つ)の意識のズレを生み出し,学級崩壊などの学校病理の背景となっている,ということのようです。
後半部では,現在臨床心理の世界で優勢な,ユング心理学を背景にしたカウンセリングに代わりうるものとして,ナラティブ・セラピーが特に強調され薦められていますが,この本の記述だけでは,ユング派の物語療法とどこが違うのかは分かりませんでした。
べんきょうしなきゃ。

*1:lionusは中高の教員免許と臨床心理士の両方をもっています。