lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

「この間,祭りがありましたが,あなたがいらっしゃらないので風情がありません」

太平洋戦争末期に兵隊にとられた夫あてに,妻が書いた葉書の一節だそうです。
昨日,ラジオ深夜便*1で,新藤兼人監督のインタビュー(シリーズ「私の戦後60年」)をうとうとしながら聴いていたら,このフレーズが耳に入ってきたのです。
他の誰でも埋め合わせのきかない,唯一の人がいないことの味気なさ,さみしさ,そして口惜しさが伝わってきます。
インタビューを通じて新藤監督は,個人の尊厳を無視し踏み潰して進んでゆく”戦争”というものへの怒りを訴えていました。
先の葉書の一節もあいまって,聴いているうち涙がはらはら出てきてしまって,子守唄代わりに深夜便を聴いていたつもりが,かえって目が覚めてしまいました。
今年の8月で敗戦から60年が経ちますが,新藤監督のようにある程度の年齢で戦争を経験した人たちは,残り少なくなってきています(人間には寿命がありますので)。このように,実際に経験した人でないと伝えられないニュアンスは,どうなるのでしょうか。どう残すことができるのでしょうか。

*1:NHKラジオ第1の長時間深夜番組