lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

工学部ヒラノ教授の青春 試練と再生と父をめぐる物語

工学部ヒラノ教授シリーズです。いつの間にかまた出ていたのね。
大学院を修了(M)されて後、就職した企業の研究所からスタンフォードに留学されて博士号をとられた時の苦闘話(第1部 カリフォルニア・サンシャイン)と、その博士論文が評価されてウィスコンシン大学の数学研究センターに1年間客員助教授として招かれた時の苦悶話(第2部 凍えるウィスコンシン)の2部構成です。
第1部を「苦闘話」、第2部を「苦悶話」と書き分けているのは、第1部は博士号をとって大学教授になるぞ〜という前向きな目標に向けた話なのに対し、第2部は、苦労して書き上げた博士論文に致命的な弱点があって、その弱点を何とか自力で克服する次なる成果(論文)を出すことができず、せっかく招かれた研究所で針の筵の1年間を過ごして帰国するという話だったからです。
「エピローグ 50年目の真実」には泣けました。ろくな業績を挙げずに駅弁大学の万年助教授で終わった父のようにはなりたくない一心で苦闘苦悶してきたヒラノ教授が、父の死後、実は父はかつて大きな定理を証明していたことを、父の同級生教授から聞くのです。もしその業績が指導教授により放置プレイされず博士論文になり博士号をとることができていたら、父は一流大学の教授になれていたかもしれない、ということでした。

p.201
74歳のヒラノ老人は、まもなく父に会うことになるだろう。その時どのような言葉をかければいいのだろうか。

父上への懺悔の書と拝見しました。