あのころ,僕たちは日本の未来を真剣に考えていた
- 作者: 今野浩
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2014/03/19
- メディア: 単行本
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なんとなんと。
”ヒラノ”なんて謙遜されていますが,全然,”只の”工学部教授なんかじゃないですか。
周知のとおり安倍晋太郎氏は総理の座をつかむことはできなかったのですが,ヒラノ教授個人にとってはかえって幸いではなかったか,というような述懐もしんみりと興味深いです。
あ,前記事でふれていた「経済学者と数理工学者のORに対する姿勢の違い」については以下に引用します。
p.102
フォン・ノイマンは,合理的意思決定者に関する五つの公理を設定したうえで,”合理的意思決定者は,期待効用最大化原理に則った行動を取るべきこと”を証明した。世の中には”非合理的な”人間もいる。しかし,そのような人たちを理論体系の中に含めることは難しいので,とりあえず(公理系を満たす)合理的人間について分析しましょう,という立場を取ったのである。
p.103
しかし世の中には,合理的な人間だけが住んでいるわけではない。場合によっては,合理的でない人が多数を占める場合もある。
フォン・ノイマン本人は,このあたりのことは十分承知していた。合理的人間は期待効用最大化原理に従うのがいい。一方合理的でない人はそのようなものを無視すればいい,というだけである。
しかし経済学者は,フォン・ノイマンのように寛容ではなかった。彼らは,合理的でない人は存在しない,もしくは”すべての人は合理的に振る舞うべきだ”と考えるのである。
ORを研究するエンジニアたちは,現状で合理的な人間モデルが当てはめられそうなら,そうしたらいい,でもそうでなさそうだったら(例えば好き嫌いとか義理とか前例主義とか非合理的なものが影響力大だったら),それに合わせて最善を尽くせばいいや,と考える。
しかし,経済学者は,エンジニアのように理論を現場に寄り添わせようとはせず,現場が間違っていると考えるのだそうです。
pp.104-105
経済学者がORから手を引いたのは,このような厄介な問題と係わり合いになりたくなかったからである(と私は考えている)。