lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ(もはや繭の中の微睡みはない。)

トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ (NTT出版ライブラリーレゾナント)

トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ (NTT出版ライブラリーレゾナント)

トランス・サイエンスとは、ワインバーグが提唱した言葉で、「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題群からなる領域」、科学と政治の交錯する領域のことだそうです。
本書では、BSEの事例などを通して、ある科学技術が社会的に大きな影響を持つ(利害や倫理的問題等)ゆえに、科学のみ(その分野の専門家)では明確な答えを出すことができなくなっている状況があることを示し、専門家でなく市民も科学技術について検討する場=「トランス・サイエンスの共和国」の必要性を訴えています。

われわれはいかに科学技術に投資をし、その研究を進めようとも、システムの巨大さに起因する不確実性からのがれることはできないであろう。世界は確率論的に描写され、「ゼロリスクはない」と専門家は言い続けるであろう。しかしこれは言い換えれば、いつでも災厄が起こり得るということである。

であるとすれば、奇妙な言い方ではあるが、「納得のいく」災厄であってほしい。トランス・サイエンス的状況における意思決定は、専門家の知の限界を見極め、トランス・サイエンスの共和国という拡大されたピアによって下す以外にない。

専門家に”お任せ”な時代ではありませんよということですね。
本書は2007年に出版されていますが、2011年3月からの福島第一原発に始まった原発問題はまさにトランス・サイエンス的状況です。