lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験(余りにもレベルが高すぎて・・・)

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書)

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書)

NHKスペシャル 宇宙飛行士はこうして生まれた〜密着・最終選抜試験〜 のディレクターと科学文化部記者によるドキュメント本です。
このNHKスペシャルは放映当時見た記憶があります。
本書を読んだのは,「はじめに」の一節をネットのどこか経由で知り,今やっている研究仕事にも参考になることがあるかなと思ったからです。
以下,長くなりますが「はじめに」から引用します。

「宇宙飛行士選抜試験」は,独立行政法人JAXAへの中途採用試験だ。その意味では,毎年大学生たちが駆けずり回っている”就活”と大差はない。企業が大学生たちに求めるのも,「決してあきらめず,他人を思いやり,人を動かす力がある」ことではないかと思う。レベルの差こそあれ,大学生が内定を勝ちとるために求められる資質も,宇宙飛行士に求められる資質も,根本的には同じなのだ。
また,企業で働くビジネスマンが,責任あるポストに昇進するときに求められる資質も同じ”人間力”に違いない。どんなに苦しい局面に陥っても,部下を引っ張っていく統率力が求められるからだ。
「宇宙飛行士選抜試験」で出された数々の課題を,候補者たちがどのように乗り越えていくのか。そのプロセスを見ていくと,必ず”就活”の大学生たちにとっても,ビジネスマンにとっても,それぞれが抱える課題への活路を見いだすヒントが隠されているはすである。

次に「おわりに」からも引用します。

昨今,書店には就職指南本が数多く並ぶ。面接の傾向や対策など,業種ごとに,攻略法が縷々として述べられている。しかし,こうしたノウハウやテクニックを駆使して,”憧れ”の仕事に就くことが,果たして本当に幸せなのだろうか。
今回の試験は,まさにそれを問いかけるものだった。10人の候補者は,試験を受ける中で,ありのままの自分で勝負しなければならないことに気づいていく。自らを飾ったり,背伸びしたりしても意味がない。たとえそれで選ばれても,自分を永遠に偽り続けなければならなくなるからだ。そして試験では,宇宙飛行士という仕事が”憧れ”だけではこなせない仕事であることが,徐々に明らかになっていくのである。

以上,2箇所からの引用を読む限りでは,非常に”まっとう”なことが書かれていると思いますし,その通りだと思います。
しかし,この”まっとう”な記述は,よく注意して読む必要があるとも思いました。
本書で密着されている10人の宇宙飛行士選抜試験受験者はいずれも偏差値でいえば70(80?)はゆうに超えているレベルの方々です。
「就活生」や「ビジネスマン」のサンプルとしては,非常に優秀な側に偏ったものと考えられます。
そのことをふまえた上で読むならば,「最後まであきらめない」ことが心願成就のポイントであるとlionusには読めました。
ただし・・・「※ただしイケメンに限る」もとい,「※ただし偏差値70オーバーに限る」のような但し書き付きで。
落とされても落とされてもあきらめず果敢にチャレンジしたとしても,ある一定ラインより下では参加資格さえ与えられない現状があります。
・・・まあ・・・「ありのままの自分」で勝負しなければならない,はすなわち,「身の丈」を知り勝負しなければならない,ということをその背面に備えているとも読めるのかもしれません・・・
一方,偏差値70or80オーバーであっても駄目な場合があるという示唆が得られたのは興味深いものがありました。

向井千秋さんの話した言葉があてはまる。
「すべての項目で,宇宙飛行士は『60点以上』をマークしなければならない」

しかし・・・本書「おわりに」で述べられた

優れた宇宙飛行士に求められる資質は,世界で戦うビジネスマンに求められる資質と同じ。

この2つを合わせて読むと「世界で戦うビジネスマン(=所謂グローバル人材)」は,最低ラインが2標準偏差(=偏差値70)であることを前提にした上の選考基準のすべての項目で60点以上をマークする必要があるとも感じられてしまいます。
ああ大変だたいへんだ。
お腹いっぱいです。