lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

スズメのお宿は街のなか―都市鳥の適応戦略(多産多死。)

昨日記事にした本と同じ著者によるものです。
スズメが桜の花,というか蜜を食す行動など,身近なのに知らなかったスズメの生態が面白いです。
しかしスズメも野生動物ゆえ,生き残るのは厳しいのだなと痛感したり。少々長くなりますが引用します。

スズメたちが繁殖場所としている住宅地では,ベテランの成鳥が縄張りを形成し,安定した定着生活を送っている。このグループを”定着相”と呼ぶことにする。これに対して,スズメの繁殖活動によって生じた若鳥たちは,次第に集合し,大きな群れを成して生活するようになり,親鳥とは別の集団生活を送るようになる。この若鳥の群れは,縄張りを持っていないために,縄張りの空席を求めて各地を漂行し,流浪の旅生活を送るようになる。こうした若鳥の集団生活を”群生相”と呼ぶことにする。こうした群生相が存在すれば,縄張りを所有している定着相の固体が死亡した場合でも,空席はただちに補充され,地域における繁殖個体群は安定したものとなる。つまり,定着相は大量の若鳥を生産し,その余剰個体群は各地を漂行しながら,新天地で定着相の空席(死亡個体)を補充していく。群生相の大群は,雀の個体群維持に有効であると同時に,遺伝子の拡散と交流にも役立っている。

佐野昌男氏の調査によれば,山村の集落で成鳥の約35パーセントが死亡し,空席になった縄張りにおさまった若鳥のうち,その地域出身の個体はわずか3パーセントであり,大部分はよそで生まれた個体が定着してきたという。