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陰陽五行と日本の文化―宇宙の法則で秘められた謎を解く(快刀乱麻)

陰陽五行と日本の文化―宇宙の法則で秘められた謎を解く

陰陽五行と日本の文化―宇宙の法則で秘められた謎を解く

易・五行の法則で研究者の間でも「謎」「不詳」とされている事柄が読み解けるということが多数の例で示されています。
例えば,
有名な龍安寺の石庭も,ただ何となく石が並べられているのではなく,ちゃんと陰陽五行の法則に基づき注意深く配されているそうです。
本の冒頭カラー口絵の「瓢鮎図」の謎も,易・五行の理論をふまえて読めば快刀乱麻を断つごとく,この画の描かれた意図と背景が見事に読み解かれています。
「瓢鮎図」参考画像京都国立博物館
一般には,以下のような見解なのかもしれません。
不思議な絵京都国立博物館

この作品は「瓢箪で鯰をおさえとることができるか」というテーマに基づいたものであることがわかります。(中略)
むしろ義持(注:画の発案者で,如拙にその画を描かせた)にとっては、こういった難しいテーマを如拙や禅僧たちといっしょに考えることこそが第一の目的であり楽しみであったのです。(中略)
なんとも、ひとを食った問い掛けというべきでしょう。これは明らかに知的な遊びです。(中略)
義持を中心とする集(つど)いがいかに自由な雰囲気(ふんいき)に満ちていたかをはっきりと物語るこの「瓢鮎図」。室町時代水墨画中の傑作(けっさく)です。

現代の私たちからすると,権力者が訳分からんテーマで画を描かせ,それに対して禅僧(当時のインテリ)たちがコメントを寄せ皆で面白がっていたなど,意味不明というか「しょ〜もない」行為にみえます。
けれども本書を読むと全く「意味不明」でもなく,「しょ〜もな」くもない行為だったと納得できます。
詳しくは書きませんが,自分を冷遇した足利義満への屈折した感情からの行為だったようです。

「禅味のある風趣」などという生易しいものではない。「この画にこめられた寓意」が「深い趣き」なのである。(中略)
周崇の序文と詩につれて,諸家も一斉に作詩し,結局は挫折した義満の野望を痛烈に或いは皮肉り,或いは嘲笑している。
後代の私どももまた国宝としてのこの画に接するとき,その出来栄えに感動するとともに,義持将軍の満足度も察することが出来るのである。