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脳神経心理学(朝倉心理学講座4)

脳神経心理学 (朝倉心理学講座)

脳神経心理学 (朝倉心理学講座)

編著者は利島保先生です(←読む前から信頼感溢れる)。
その利島先生執筆の「1. 神経心理学の潮流」は「1.1 脳と心の関係を考える研究史」「1.2 現代脳研究の展開」「1.3 神経心理学とは何か」といったえらい幅広い内容を簡潔にずばっとまとめておられて素晴らしかったです。
その他の分担著者の先生方も,互いに重複する内容はあるものの(1つのテーマを違う角度から扱っているから・・・),その重複も「大事なことなので二回言いました」的に納得できるような,どれも限りある紙幅で必要十分な記述を尽くそうとされている姿勢がうかがえるような気がしました。
ところで,本書は「1. 神経心理学の潮流」から「9. 神経心理学リハビリテーション」まで9章構成ですが,1.と「2. 脳の構造と機能」の2章分以外はほぼ障害(失語症とか失認とか,色々)についての記述で,ブローカが運動性失語患者の死後脳解剖の所見より,ヒトの脳と高次精神機能の関係を最初に科学的な形で示し,現在の「脳神経心理学」の扉を開いたその延長線上にこの本があるのだなと改めて実感しました。
つまり,障害された機能と損傷部位の対応を検討することを通じて,脳神経心理学の研究は発展してきた(きている)ということです。
なお臨床心理学は別として,一般的な「心理学」は”普通の人”を想定した内容ですので,障害の話ばっかりというのは実は特異的なのです。